最近、乾いた気候と寒さが原因で、百日咳が大人の間で流行しています。
乾いた咳がしつこく続いているな・・?と思ったら、実は百日咳に感染していたという例が増えています。百日咳というと、赤ちゃんの時にかかる病気というイメージが強く、また子どもの頃に予防接種を打っているはずだから、まさか感染することはない・・と思う方が多いのですが、ワクチンの効果は10年以上経つと薄れてしまうので、十分に感染する可能性はあります。実際、20歳以上の大人が感染する割合は、全体の4割近くに上ります。
最近では、2007~2008年にかけて、20歳以上で900人近い人が感染しましたが、2010年には1,241例とさらに増え、全体の5割近くが大人の感染者でした。
長く咳が続く病気には、肺炎や気管支炎、マイコプラズマ肺炎、RSウィルスなど様々ありますが、百日咳の場合は、特に高い熱が出る訳でもなく、発作的な咳が長く続くのが主な症状なので、百日咳とは気付かない方が多いようです。
感染ルートと主な症状
感染した人の咳やくしゃみによる飛沫感染や、感染者の唾液等のついたものを介して接触感染します。潜伏期間は7日~10日間で、発症初期は必ずしも発熱するとは限らず、咳が続くので、ただの風邪かな?と思う方が多いようです。
2~3週間経っても、しつこく咳が続き、そのうち息を吸い込む時に「ヒューッ」という音がする発作を繰り返す百日咳に特有の咳(レプリーゼ)が見られます。
大人の場合は、抗生物質を服用すれば、次第に発作的な咳も収まって治癒していくのですが、思いあたるような症状がある場合は、お早めにご相談下さい。
尚、厄介なのは、発症当初2週間の最も感染力が強い間に、自分が百日咳にかかっていると知らずに、周りにいる小さな子どもうつしてしまうことです。乳幼児が百日咳にかかってしまうと、合併症で肺炎や脳炎を起こしたり、生後6ヶ月未満の乳児が感染すると、百日咳に特有の咳が見られないことがあり、突然呼吸困難に陥ってチアノーゼを起こすことがあります。
一番の予防策はワクチン接種
百日咳は非常に感染力が強く、免疫のない人は70%以上の確率で感染します。DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)の3種混合ワクチンが有効ですので、生後3ヶ月を過ぎたら、脳症などの合併症を予防するためにも早めにワクチンの接種をしておきましょう。また、大人になって効果が薄れていて、職場や学校ではやっているような場合は、感染を避けるためにもう一度接種することが可能です。ワクチンは用意してありますので、心配な方はご相談下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。