
毎年、秋から冬にかけて、咳やくしゃみでインフルエンザウィルスがまき散らされることによって流行します。
ほかの風邪ウィルスに比べて感染力が非常に強いことがインフルエンザの特徴。 増殖力もとても強く、たった一個のウィルスが、24時間後にはなんと百万倍に!また繁殖中により感染力の強いウィルスに「変種」するのもやっかいなところです。
インフルエンザウィルスの型(A型、B型、C型)
毎年、日本では1,000万人を超える人がインフルエンザにかかっています。 インフルエンザ情報には、必ず「A型」や「B型」といった用語がついてくると思いますが、これはウィルスの型をA、B、Cと大きく3つに分類したものです。
特徴として、A型ウィルスは非常に種類が多く、抗原性が繰り返し変異するために毎年異なるパターンで流行します(ゆえに季節性インフルエンザと呼ばれています)。
B型ウィルスは、あまり変異がなく、種類も限られているため、ワクチンの予防効果が最も高い型です。
C型は、ウィルスの特徴が大きく異なり、ほとんど流行しないことから通常ワクチンには含まれていません。
また、新型インフルエンザと騒がれて2009年に流行したH1N1型は、従来の抗原性とは大きく異なっていたため、免疫を持っている人が少なく、多くの人が感染したことから「新型」と呼ばれましたが、今となっては既知のウィルス型として「季節性インフルエンザ」の一部であり、有効なワクチン株も用意されています。
インフルエンザの症状とは?
発病までの潜伏期間は1~3日ほどで、主な症状としては急激な発熱とだるさで発症します。 熱は3~5日ほど続きますが、一度、熱が下がった後、再び熱が出るケースも多いようです。
よく「インフルエンザと風邪の違いがよくわからないのですが」という質問を多くのお母さんから受けますが、一番の違いは、インフルエンザの熱は、一度治まったあと、また上昇するという点です。 普通の風邪は、一度熱が治まれば、そのまま回復に向かうのですが、インフルエンザはしつこく熱が続きます。熱が下がったからと気を緩めると、再び高熱になって、脳炎などの合併症を引き起こしてしまうケースがありますので、油断はできません。
インフルエンザと風邪の違い
症状 | かぜ | インフルエンザ |
発症 | ゆっくり | 急激 |
発熱 | 軽度、38度まで | 高い、39度~40度 |
症状の出る部位 | 上気道症状(くしゃみ、鼻汁過分泌など) | 全身症状(倦怠感、食欲不振など) |
全身の痛み | ない | 強い |
鼻炎、咽頭炎 | 強い、全身症状に先行 | 全身症状に続く |
合併症 | 少ない | しばしば肺炎を起こす |
経過 | 短い | きわめて短い |
発生状況 | 散発性 | 流行性 |
だるさ | 少ない | 強い |
悪寒 | 少ない | 強い |
さらに、症状として咳や鼻水、頭痛やのど・筋肉・関節などに痛みが出ることもあります。 いわゆる「節々が痛い」という状態です。また下痢や嘔吐など、消化器の症状を起こす場合もあります。
水分が摂れなくなって脱水症状を起こしたり、咳がひどくなって体力を消耗すると、さらに症状が悪化する場合があります。
よく起こりがちな合併症としては、中耳炎や気管支炎、肺炎、ときには脳炎をおこし、深刻な状態に陥ることがあります。
高熱をともない、けいれんのあとで意識が戻らないような症状が見られたら、速やかにクリニックを受診してください。
インフルエンザの対処法
高熱やだるさがあれば、一度クリニックを受診してください。
最近はインフルエンザウィルスの増殖を抑える薬を使って症状を抑えます。また今現れている症状をやわらげる薬や、状態によっては抗生物質も使用する場合があります。
子どもが高熱でとてもつらそうなときには、安全な解熱剤を処方してもらっておくと安心です。
家庭ではなにより安静が一番です。 快適に過ごせるように室温を調整したり、乾燥しがちな冬場は、とくに加湿を心がけてください。
診察を受けて、熱が下がったからといって安心は禁物。インフルエンザは一度下がった熱が、再び上がることもしばしばあります。子どもの様子をじっくり観察しましょう。
インフルエンザの予防接種を受けましょう
インフルエンザのタイプはたえず変化するため、毎年必ず集団の流行がみられます。数年に一度は大きな流行がおきています。
ワクチンはウイルスの変化に対応するため、流行の予測調査をし、毎シーズン新しい物が用意されています。
インフルエンザにかからないようにするためには、予防接種を受けること、手をよく洗って、うがいをすることです。
予防接種を受けておけば、感染力の非常に強いインフルエンザにかかりにくく、またもしうつっても軽い症状で済むことが期待できます。
中でも乳幼児の脳炎、脳症は確実に予防できると考えられています。特に乳幼児や高齢の方は、できれば年内にワクチンの接種を受けておかれることをお勧めしています。
予防接種のリスクを怖がる人もいますが、深刻な合併症を引き起こすインフルエンザの怖さにくらべれば、そのリスクはかなり小さいといえます。なお、現在のインフルエンザ・ワクチンは改良されていて、大きな副作用はまずありません。
ただし、予防接種はインフルエンザが流行してから受けてもあまり効果的とはいえません。 体内にインフルエンザの抗体ができるまでには、ある程度の時間がかかるためです。 したがって、流行する2~3ヶ月前の11~12月に受けるのがベストです。インフルエンザの予防接種は早めに受けましょう。2回受けないと抗体がきちんとできないことがあるので、特に若い方は2回受けることをお勧めします。
またインフルエンザの流行期には、人混みへの不必要な外出などは避けた方が無難でしょう。 インフルエンザについて詳しく調べている医療グループの調査によると、滞在期間が1~2時間と短く空気清浄器などの設備のあるクリニックで感染することはほとんどなく、多くの場合電車やバス、会社、保育園、幼稚園、学校など長時間滞在する場所や密室で感染するそうです。いずれにしても予防しておくことはとても大事です。
ワクチンの有効性(発病抑制、たとえ罹患しても軽症で済むなど)は多くの研究で実証済みです。
阪神大震災でインフルエンザワクチンが大活躍し、あの悲惨な状況のなかで大流行せず、多くの人の命が助かりました。避難所で何千人もの人がワクチンを受けたそうです。こどもには大人からも風邪がうつりますので、お母さん、お父さんが風邪をひかないことがキーポイントになります。
予防接種の副作用のうちで、めったにはないのですが、注射の直後に急に具合の悪くなることもあると言われています(アナフィラキシー)。15分程度は、医院にすぐにひきかえせたり、連絡が取れるようにしていてください。
- 注射したところは、軽くもんでください。
- 接種当日は激しい運動は避けてください。(入浴は構いません)
- 接種した後、まれに丸一日以内に熱を出すことがありますが、ほとんどそのままでおさまります。
- 注射したところが、赤くなったり腫れたりすることがありますが、そのままにしておけば、1週間くらいでおさまります。
- 13才未満の方は、2回の接種が必要です。
又、大人の方でもできれば2回の接種をお勧めしますので、ご希望の方は受付に申し出てください。2回目は1~4週間以内に受けて下さい(通常、2週間以上あけた方が効果的です)
インフルエンザワクチンは不活性化してあるワクチンです。
他の予防接種は、1週間以上たってから受けてください。
流行状況については、横浜市衛生局感染症情報ホームページをご覧ください。

【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。