赤ちゃんは、お母さんのお腹の中で足を丸めているため、生まれつきO脚であることがほとんどです。筋肉やじん帯が未熟であり、歩き始める1歳~2歳までの間は、O脚であることが多く、転びやすいのはそのためです。その後自然とO脚は改善しますが、逆にX脚(両足を揃えた時に膝が当たって、足は離れている状態)になる傾向があります。5~6歳ごろまでには自然とまっすぐな脚に成長してゆくので、通常は特に治療の必要はありません。
生まれつきX脚の場合や6歳を過ぎてもX脚が治らない場合、また3歳を過ぎてもO脚が治らない場合は、精密検査をする必要があります。
注意したいのは、生理的なO脚ではなく、「くる病」というビタミンDの欠乏や骨の異常によってO脚になっているケースです。最近くる病になる赤ちゃんが増加傾向にあります。ビタミンDが不足すると骨の強度が弱くなり、膝に負担がかかってO脚が自然治癒しなくなります。ビタミンDの不足は、歩き始めるのが遅い、歩き方がおかしい、身長が伸び悩むという症状でも発見することができます。ビタミンDは母乳に不足しがちな栄養であり、完全母乳で育てている場合に不足するケースがあります。お母さんがビタミンDのサプリメントを摂取したり、ビタミンDが豊富な食事(サケ、サバ、イワシなどの魚や卵黄など)を積極的に摂る、粉ミルクで補う、または夏場なら10分程度、冬なら1時間程度の日光浴(紫外線による皮膚からの合成)をするというのが予防に有効な手段と考えられます。妊娠中から積極的にビタミンDを摂取することも効果があります。
もうひとつ注意したいのが、ブラント病です。これは脛(すね)の骨の成長障害で、脛の外側の骨ばかりが成長して、脛が内側に曲がるためにO脚が進行する病気です。原因はわかっていませんが、経過を見て、4歳になっても改善する様子がなければ、外科手術を行う場合もあります。
その他、遺伝的な原因によって骨や軟骨に異常が生じる病気(骨系統疾患)による関節の変形でO脚やX脚になるケースもあります。
いずれの場合は、まずは経過観察し、症状に応じて検査をお勧めすることがありますので、ご心配な方はクリニックにぜひご相談ください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。