乳児期に多い病気として、食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)と呼ばれる胃腸炎があります。これは、牛乳(90%)、母乳(20%)、米、大豆、卵などを食べた後、2時間以上あるいは数日経って消化管に炎症が起きて、嘔吐や下痢、血便を繰り返す病気です。普通の食物アレルギーと違うのは、食物アレルギーの場合、アレルギー反応を起こす抗体(IgE抗体)がこれらの抗原と反応して摂取後2時間以内に蕁麻疹や嘔吐、下痢、呼吸困難などの症状が出ますが、食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)はIgEとは全く関係なく症状が出現します。
卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎は治る?
食物蛋白誘発胃腸炎は、元々は粉ミルクで嘔吐、下痢、血便が起こる事がほとんどでしたが、10年前ぐらいから卵黄、米、大豆で嘔吐のみが出るタイプが増えています。 中でも卵黄によるものが多くみられ、当クリニックでもここ数年相談が増えています。原因を特定することは難しいのですが、ミルクによる嘔吐の場合は、ミルクを特殊治療ミルク(市販されています)に変えてみることをお勧めします。卵黄、米、大豆などは離乳食が始まってから症状が出始めますので注意が必要です。嘔吐、下痢を繰り返す症状やなかなか体重が増えない場合は、食物蛋白誘発胃腸炎の可能性も疑われますので、ご不安な場合はぜひご相談下さい。診察しながら原因となる食品を特定し、摂食できる適正な時期をご提示していきます。適切に診療、治療が進めば、概ね2〜3歳までには寛解、治癒していくように指導致します。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。