アレルギーの原因となる物質が体内に入ってすぐに喘息症状や血圧低下、蕁麻疹、動悸、腹痛、ショック状態に陥ることを「アナフィラキシー」と言いますが、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーというのは、アレルゲンを摂取した直後に起こるわけではなく、その後数時間以内に運動(清掃や徒歩も含む)や、入浴をすることによって、アレルゲンの腸からの吸収が促進されるために2時間ほどの時間が経ってからアナフィラキシー状態になります。良く経験するのは、学校で給食や弁当を食べた後運動し、突然上記の様な症状を訴えて救急外来を受診するケースです。生徒本人だけでなく、先生や周りの友達もびっくりしてしまいます。
原因となる食品は、小麦、エビやイカ、果物が多いと報告されています。これらの食品は、普段普通の生活で食べていても何も症状は起こりませんが、前述の様に直ぐに運動すると症状が突然起こります。また、これら食物摂取の前に解熱鎮痛剤を飲むと激しく誘発されることも知られています。従って、診断のために、解熱鎮痛剤を予め服用させてから食物を食べて、その後運動させて症状の有無を確認する誘発負荷テストを行うこともあります。
また、その日の体調によっても左右され、睡眠不足や風邪、生理、疲れていたり、ストレスを抱えていたり、花粉症の時期などでは出現し易い傾向があります。
対応策
食物依存性運動誘発性アナフィラキシーは、薬で予防することはできません。ご自身がアレルギーを起こしやすい食品を食べた時は、数時間(最低2時間)運動や入浴を控えることが予防策です。
発作が起こった場合は、安静にして、迷わず救急車を呼んでください。食物依存性運動誘発性アナフィラキシーを発症したことがある人や頻繁に発作が出る場合には、抗アレルギー薬の服用と、発作時にすぐに経口服用できるようにあらかじめ抗ヒスタミン薬や、副腎皮質ステロイド薬を処方することもあります。また、予め携帯用アドレナリン(エピペン@)を持っておくことも大切です。保険で処方が認められているので、必要な方はご相談下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。