非常に聞き慣れないウィルスの名前ですが、実は昔から人から人へと感染し、RSウィルスと似たような気道系の病気の原因となってきました。このウィルスの存在が発見されたのは2001年で、オランダで急性呼吸器感染症の原因ウイルスとして発見されました。このウイルスは2003年に人類をおびやかしたSARSと異なり、昔からヒトの間で流行してきたかぜのウイルスの一種で今までウイルスの同定ができませんでした。1歳未満~2歳くらいまでの間の乳児・幼児に感染する傾向があり、10歳までにはほとんどの人が感染すると言われています。また、一度感染しても免疫がつかないので、何度でも感染します。
感染するとウィルスは4~6日間くらいの間潜伏し、発症すると発熱、咳、鼻水をともなう一般的な風邪症状のような状態になりますが、やがて肺の下部気気道を侵して、細気管支炎や肺炎、喘息に似た発作や、呼吸困難を引き起こします。
このウィルスは、冬~春にかけて流行し、症状がRSウィルスと非常によく似ています。現在は、確定診断のためのキットが開発されて、外来でも診断が出来るようになり、保険も適用されるようになりました。インフルエンザでもなく、RSウィルスでもない場合には、このウィルスの可能性を疑います。
新生児や乳幼児、及び高齢者や免疫不全の方、免疫不全,または心肺障害を基礎疾患としてもっている人は,重症化する恐れがあるので注意が必要です。
治療と予防
hMPVの治療には特効薬がなく、呼吸状態に応じて酸素の補充や水分補給を行い、咳や発熱の症状を緩和する対症療法だけになります。
感染しやすい乳幼児の場合、ウィルスが付着したおもちゃをなめたり触ったりして感染する可能性が高いので、保育園などの集団生活ではケアーする周りの大人達の細かい配慮が大切です。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。