皆さん、インフルエンザ菌というのを聞いたことがありますか?
これは、インフルエンザウィルスとは全く別のヘモフィルス・インフルエンザ桿菌と呼ばれる細菌で、髄膜炎菌、肺炎球菌と並んで乳幼児の髄膜炎を引き起こす病原体のひとつです。
中でもインフルエンザ菌は、治療が困難な化膿性髄膜炎を発症させる確率が最も高い病原体として問題となっています。
インフルエンザ菌には、いくつかの種類がありますが、乳幼児の重症髄膜炎や肺炎などの呼吸器疾患、菌血症の原因となるのが、b型インフルエンザ菌です(略してHibと呼ばれています)。国内では推定で年間約1000人(うちHibによる場合は約600人)が発症しており、罹患児の5%が死亡、25%に聴覚障害やてんかんなどの後遺症が出ると報告されています。
特に多いのが5歳未満で、その約半数が1歳未満の乳児です。特に乳幼児の場合は、病状が急変したり治療が間に合わなかったりで、死に至るケースもあります。Hibによる疾患は、初期は胃腸炎に似ていて診断が難しく、また、抗菌薬の乱用によってHibの薬剤耐性化が年々高くなってきており、治療も難しくなっています。
この菌は、鼻の奥に潜んでおり、健康な子どもでも5~10%くらいは保菌していると言われています。
ワクチンで予防できる!
Hibを予防する最も有効な方法は、ワクチンを接種することです。
欧米では、すでに1987年からインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの定期予防接種を導入し、髄膜炎の患者が100分の1に激減するなど効果の高さが確認されており、100カ国以上でもワクチンが使われています。一方、日本では国内での発症率が低いことからワクチンの必要性に対する社会的認知が遅れ、先進国の中で唯一ワクチン未承認のままになっていましたが、日本でもようやくインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンが許可されることになりました。
インフルエンザ菌性髄膜炎は、ほとんどが5歳未満の乳幼児に発症
インフルエンザ菌による化膿性髄膜炎は、新生児では母親からの移行抗体に守られているため発症は少ないのですが、3~4か月になると移行抗体が消失し、罹患率が高くなります。乳児期からの集団保育では、特に注意が必要です。
2~3歳からは徐々に自然免疫が発達し、あるいは不顕性感染により、抗体を獲得することで発症率は低下し、5歳を過ぎると発症しなくなります。したがって、Hibワクチンは、生後2か月から5歳までの間に4回接種する必要があります。
他のワクチンとの接種間隔
生ワクチンを接種した場合は通常、27日以上 他の不活化ワクチンを接種した場合は、通常6日以上間隔をあけて接種して下さい。
*ただし、医師が認めた場合は、三種混合と同時に接種することも可能です
最新情報は横浜市の保健所ホームページをチェックしてください。
お問い合わせ 横浜市ワクチン相談窓口
045-671-4183 午前9時~午後5時 (土日・祝日、年末年始除く)
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。