
インフルエンザに感染した乳幼児に多いのがこの病気です。特に5歳未満の幼児は、インフルエンザにかかった際時に、ウィルスが脳内に直接侵入して脳に炎症を起こして脳炎になる場合と、インフルエンザウィルスに過剰反応してサイトカインという物質が体内に放出され、けいれんや意識障害、異常行動を起こす脳症があります。
特に重篤なケースでは、発病してわずか1日以内に神経障害を起こして呼吸困難に陥り、命を落とすこともあります。
脳症になるケースかどうかを予測することは難しく、またけいれんも発熱による単純な熱性けいれんと区別することは難しいと言われています。
そもそもインフルエンザは非常に強力な病原体です。通常、ウィルスに感染すると、人間の体は病原体から守ろうとする免疫システムが働いて、ウィルスを除去しようとします。

ところが、インフルエンザのように強力なウィルスが侵入すると、その免疫システムが過剰に反応してサイトカインという物質で全身が溢れ、脳内のシステムが正常に働かなくなることで脳症を起こすのではないかと言われています。
また、全身の臓器にもダメージを与えることで、血管が詰まったり多臓器不全となり、最悪の場合命を落とす可能性もあります。またこのような症状が出た後では、もはやタミフルなどの抗ウィルス剤は効きません。
インフルエンザウィルスは、発症してから48~72時間後に増殖するため、早めに発見して抗ウィルス剤を服用することでウィルスの増殖を抑えることが、脳症の防止につながります。
こんな症状が見られたらすぐに受診しましょう
- けいれんが10分以上続く
- 左右対称ではない
- 呼びかけても反応しない
- いつもと違う行動をとる(異常な発言、おびえたり癇癪を起す、モノの区別があやふやになる等)
ワクチンの効果
インフルエンザワクチンを打っていれば脳症にならないか、というと、それは免疫力の獲得に個人差があるために確証できません。しかし、毎年継続的にワクチンを打てば、免疫力は次第に高まってきますので、特に乳幼児はワクチン接種可能な生後6か月から継続的に受けることをお勧めします。

【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。