季節性のインフルエンザには、毎年流行が予測されるウィルス型に対するワクチンが作られていますが、このワクチンを接種しても型が合わず感染してしまうのが、新型インフルエンザです。
新型インフルエンザは、 鳥やブタなどから発生したインフルエンザウイルスが、大きな突然変異を起こして、人の体内で増殖できるようになったものです。 つまり、 多くの人が免疫を持っていない新しいタイプのウイルスなので、 容易に感染してしまい、大流行を起こしてしまうのです。
インフルエンザの株
インフルエンザは、インフルエンザウイルスの表面にある2種類の糖たんぱく質であるヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)があり、Hは16種類の亜型(H3の3など数字の部分)、Nには9種類の亜型があり、それらの組み合わせで、 16×9=144種類の亜型が存在します。
例えば、H7N9型は、H7亜型のヘマグルチニンとN9亜型のノイラミニダーゼを表面に持つウィルスで、これまではH7型は鳥にしか感染しないとされてきました。しかし、2013年に初めて中国でH7N9型ウィルスがヒトに感染・流行したのをきっかけに、毎年東南アジアや中国で流行するようになりました。このウィルスは、突然変異したのちに高い病原性を獲得した新種のウィルスで、中国で報告された感染者の約4割が死亡しています。
新型インフルエンザが発生したら?
毎年流行する季節性のインフルエンザは、ウイルスの遺伝子が少し変わるだけなので、多くの人がある程度の免疫を持っています。しかし、豚、鳥、人のインフルエンザウイルスが混ざって大きな変異が起きてしまうと、免疫を持っていない人が多く、大流行(パンデミック)する可能性が高くなります。
現状では、このような大きな突然変異が起こるかを予想することはできないので、残念ながらインフルエンザワクチンで予防することはできません。
流行している地域への旅行は控えること、外出後の手洗い、うがいを習慣にすることが大切です。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。