アデノウィルスは、いわゆる「風邪」の原因となる代表的なウィルスのひとつです。非常に感染力が強く、特に流行する時期が決まっているわけではないので、1年を通して感染する可能性があります。
アデノウィルスの疾患でよく知られているのが、プール熱(咽頭結膜炎)やはやり目(流行性角結膜炎)ですが、アデノウィルスは、現在知られているだけでも51種類もあり、その型によって様々な症状を引き起こします。通常は、くしゃみ、鼻水、咳、のどの痛み、発熱といった「風邪」症状から始まり、扁桃腺やリンパ節で増殖すると何日も高熱が続き、咽頭炎や扁桃炎、結膜炎、嘔吐下痢症などの重度の症状に進行します。
感染経路
アデノウィルスは、扁桃腺やリンパ節に潜伏しており、発症した人の咳・くしゃみによる飛沫、手や皮膚の接触、便などを介して、口や鼻、喉、目の粘膜から簡単に侵入します。特に、夏場は学校のプールで感染して大流行することがあります。
診断と治療
アデノウィルスの診断は、綿棒でのどや目の粘膜から擦り取った浸出液を試薬に作用させることで、20分程度で調べることができます。しかし、診断がついたからといって特効薬があるわけではありません。
当クリニックでは、漢方薬を処方して早期の治癒を目指します。高熱が続く場合は解熱剤、のどの痛みや腫れを緩和する消炎鎮痛剤、結膜炎になっている場合は抗菌薬やステロイドの入った目薬、嘔吐下痢などの胃腸症状が出ている場合は、整腸剤や吐き気止めを処方しながら、回復を待ちます。二次感染を防ぐために抗生剤を処方することもあります。
家庭でのケアと予防
37度~40度の間で熱が上がたり下がったりするので、とにかく脱水にならないように、こまめに水分補給しましょう。また胃腸が弱っていて下痢しやすいので、消化の良いものを少しずつ食べるようにしましょう。もし十分に水分がとれていないようなら、すぐに受診してください。特に5歳以下の乳幼児が感染すると、重度の肺炎になるリスクが高いので要注意です。
消化に良い食べ物はこちらを参考にしてください。
家族に感染するリスクが高いので、こまめに石鹸で手洗い、うがいでのどを消毒し、タオルや洗面具を分けて、感染した人と接触した後に目や鼻をこすったりしないように気をつけ、そしてウィルスに負けないようにしっかり栄養と睡眠をとって体力をつけておきましょう。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。