インフルエンザは、年末から春先まで毎年流行を繰り返すウィルス感染症です。症状は、普通のかぜ(感冒)と異なり、咳や鼻水、体のだるさから始まり、徐々に喉の痛み、筋肉や間接の痛み、頭痛、高熱、吐き気や下痢などの消化器症状を伴います。さらに悪化すると、気管支炎や中耳炎だけでなく肺炎、脳炎、 心筋炎などの重大な合併症を引き起こすこともあります。 症状だけで「新型コロナ」とインフルエンザの区別はできません。インフルエンザの予防はとても大切です。
ウィルスに対する強い免疫をつけるには、ワクチン以外方法がありません。特に小児は、インフルエンザに対する抵抗力が弱いので、成人、高齢者と共にぜひお勧めしたいと思います。
インフルエンザの型は、毎年変異するので、それに対応したワクチンが必要になります。それに応えるために。WHO(世界保健機構)は、世界中に観測点を設けて、流行の型の厳しい選別を毎年行っています。それにより。高い精度でその年流行が予想される方をワクチン株として決めています。日本の厚労省もこれを参考に、子どもから大人まで対応できるワクチンを各メーカーで製造するように指導し、10月初めから各医療機関に配分するように指示しています。
現在のインフルエンザワクチンには、流行する確率の高いA型、B型2種類のインフルエンザ株が入っていて、発熱抑制率、発病阻止率、合併症軽減率などの多くの有効性が国内外からのデータで認められています。
2022/2023冬シーズンワクチン株(厚労省発表)
★A/ビクトリア/1/2020(IVR-217)(H1N1)
★A/ダーウィン/9/2021(SAN-010)(H3N2)
★B/プーケット/3073/2013(山形系統)
★B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)
例年11月中旬~下旬は大変混雑しますので早めの接種をお勧めします。10月に接種されても効果は来年春まで十分継続します。抗体を作るには、年内にぜひ終わらせておくことをお勧めします。現在使用されているワクチンには重大な副作用報告はありません。
4価ワクチンとは?
従来のワクチンは、A型2株(A香港型と2009年に新型インフルエンザと呼ばれたH1N1型)とB型1株の3種類に対抗できる3価ワクチンでした。
日本の生物学的製剤基準では、薬の中に含めてよいタンパク質の上限が3種類までと決まっていたため、2種類あるB型ウィルス(ビクトリア系統と山形系統)のうち、前回のシーズンで流行したウィルスをもとに予測して、どちらかの系統をワクチンに入れていました。
しかし、最近のB型ウィルスは、2つの系統が同時に流行する傾向があり、ワクチンに入っていない方の型が流行してしまうと、ワクチンの効果がなくB型ウィルスに感染してしまうケースが多くみられました。
そこで、2015年から両方のB型ウィルスに対抗できる4価ワクチンが日本でも導入されることになりました。WHOでもB型2種類のワクチンを推奨しており、アメリカではすでに2013年から4価のワクチンを導入しており、その効果が実証されています。
3価と比べて副反応は?
従来よりも1つ抗原が増えることで副作用や副反応も強くでるのではないか?と不安に思われるかもしれません。確かに、抗原が増えればその分、接種部位の腫れや発熱といった副反応が強くでる可能性はありますが、厚生労働省や製薬会社によると、副反応や副作用は従来と同様に個人差があるとの見解です。
接種した部位が赤く腫れたり、熱を持ったり、硬くなったりといった副反応や、軽い発熱なら2~3日で自然に治まります。通常のワクチンと同じでほとんど起こることはあり得ませんが、もし接種後24時間以内にけいれんや、意識障害が出るなどの全身症状が悪くなった場合は出来るだけ早く受診してください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。