小児喘息(ぜんそく)

発作性に笛を吹く様な喘鳴(ゼーゼー)を繰り返す病気で、基本的には自然に軽快、治癒します。しかし、ひどくなると呼吸が出来ない呼吸困難に陥り、場合によっては死に至ることもあるので、疎かにはできない病気です。喘息(ぜんそく)の発作のときは呼吸がしにくく、本人が苦しいだけでなく、周りにいる人にとってもつらいです。 喘息のことをよく理解し、対処の仕方も知ってください。

喘息の発作

空気の通り道である気管支が細くなっている状態(気道の狭窄)をいいます。 息を吐きづらくなり、ゼーゼーと音を立てるようになります(喘鳴)。それがひどくなると呼吸困難になり、とてもくるしくなっていきます。

子どもの喘息

気管支の粘膜が炎症をおこしていて、とても傷つきやすく、過敏になっています。何かのきっかけによって、このような発作を繰り返しているのが喘息です。 また子どもの喘息は、そのほとんどがアレルギーがベースにあります。(とくにダニやハウスダスト) このため、ダニの発生を少なくするなどの「環境整備」はとても大切です。

喘息になる頻度は?

日本では増加傾向にあり、小児の4~6%という報告が多く、若年層では男児が女児よりも多いようです。最近、特に1歳前後の乳幼児喘息の増加が話題になっていて、喘息発症の低年齢化が進みつつあります。

何が原因?その病態生理は?

喘息児の気道粘膜は「炎症」が起こっていて、とても敏感で傷つき易くなっているので、わずかな刺激でも反応して咳が増えたり、粘膜がむくんでしまいます。また、気道を取り巻く筋肉(平滑筋)が縮んで息苦しくなってしまいます。

その敏感になってしまう原因は、室内環境の変化(ダニの増加)や大気汚染、喫煙、更には小さいころから衛生環境が良すぎるのでアレルギーへの抵抗力がかえって減弱してしまっている、あるいは遺伝的にアトピー体質がある等、色々なことが言われています。しかし、明確な解答は残念ながら得られていません。

風邪は長引くと喘息になるの?

なることもあります。カゼのRSウイルスが喘息の引き金をひくという欧米のレポートが最近増えています。3親等以内にアレルギーがあると特にその傾向は強くなるようです。子供の喘息と大人の喘息は性質が異なり、子供の喘息は7歳までに50%は治ると言われています。

発作のきっかけ

室内でお布団をバタバタするとダニの死骸やその糞がまき散らされ、それを吸い込んで発作を起こします。 しかしこういったアレルギー以外にも、さまざまなことが発作のきっかけになります。風邪や気管支炎などの感染症、たばこや線香の煙、気候の変わり目でさらに低気圧が近づいている時(春先や秋口)、運動、ストレス、過労など、様々です。

発作の時の気管支を輪切りにしてみると・・・

平滑筋が縮み、内側の粘膜がむくみ、痰が増えて空気の通り道が狭くなる。
( 山本淳先生著 「図解 よくわかる小児ぜんそくの本」(主婦と生活社)より )

喘息発作の程度

発作呼吸の状態睡眠会話食事
大発作呼吸困難がきわめて強く、日常生活が困難苦しくて眠れない話しかけても返事ができない食べられない
中発作「ゼーゼー」「ヒューヒュー」がはっきり聞こえるときどき目を覚ます話しかければ返事をする少ししか食べられない
小発作「ゼーゼー」「ヒューヒュー」はあるが呼吸困難はないふつうに眠れるふつうに話ができるふつうに食べられる

見通し

2歳前後から始まり、4~5歳ころがピーク。 小学校にあがるくらいには落ち着いてきて、10歳ころにはほとんど発作をおこさなくなるのが一般的です。 でも、アレルギーの体質がなくならず、目や鼻のアレルギー(花粉症など)がその後も長く続くことがよくあります。

アレルギーマーチ

子どものアレルギーの病気は様々で、年令によって違いがありますが、どうもそれらが一連のものとして続いていることが多いようです。

乳児期の食事によるアレルギーではアトピー性皮膚炎になり、1歳過ぎくらいからダニなどのアレルギーが加わり、次第に喘息になってきます。

喘息は幼児期にもっとも強い発作を起こしますが、学童期には落ち着いていきます。 中学生ころからは目や鼻のアレルギー(花粉症など)が始まり、30~40歳代まで続いていきます。 小児科でアトピーや喘息の治療を早めにしっかりと行いたいのは、この「アレルギーのマーチ」をくい止めたいと思っているからでもあります。