かつては、「乳児喘息」という病名は、2歳未満の赤ちゃんの喘息のことを指していましたが、2017年の小児気管支喘息、治療・管理ガイドライン(日本小児アレルギー学会)からは、5歳以下の喘息を一括して「乳幼児喘息」と呼ぶようになりました。
赤ちゃんは、咳、鼻を伴う感染症にかかると、鼻水が喉に落ちて喉の奥でゼロゼロという音がしたり、気道の炎症によって、空気の通り道が狭くなり、喘息に似た「ゼーゼー、ヒューヒュー」という音がしたりします。従って、2歳未満の赤ちゃんは通常の風邪でも喘息の様な症状がでるので、正確に「喘息」と診断するのは非常に難しく、小児アレルギー専門医は様々な臨床経過から経験的に診断しています。
24時間以上赤ちゃんの吐く息が「ゼーゼーヒューヒュー」している(これを呼気性喘鳴といいます)状態(エピソード)があり、これが3回以上繰り返し、そのエピソードとエピソードとの間に1週間以上の無症状の期間がある場合、「乳幼児喘息」と診断します。また、気管支拡張薬の吸入刺激後に症状の改善が認められることも重要なサインです。気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギーの素因が両親や同胞にあるかどうかも、重要な診断材料になります(家族歴)。
アトピー性皮膚炎や気管支喘息の赤ちゃんに検査が必要かという質問がよくあります。赤ちゃんは大人と同じような多種類の食材を食べていませんし、四季折々の季節の変化の経験も乏しく、空気中のアレルゲン物質に十分に触れていない(感作されていない)ので、アレルギー検査をしてもアレルゲンを特定できるわけではありません。従って、必要があれば検査をしますが、特に検査にとらわれず、経過を観察しながら、タイミングを見て喘息の原因の確定診断を付けていきます。
早いうちに、早く治すのが鉄則
前述したとおり、喘息は気道の炎症によって、空気の通り道が狭くなり、呼吸困難になる病気です。発作を繰り返せば、それだけ気道の炎症がひどくなり、症状も悪化し、発作の回数も増えます。ですから、できるだけ早いうちに喘息と診断し、予防と治療を開始すれば、重症化することを防ぐことができます。
大切なことは、発作を繰り返し起こさないような予防と定期的な通院治療、発作の原因となるアレルゲンを除去するなどの環境作りです。
喘息について詳しくは「小児喘息について」をご覧下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。