皆さん、ゲーム脳という言葉をご存じですか?
日本大学文理学部体育学科教授で脳科学者である森昭雄のゲーム脳の恐怖 (生活人新書)という著書の中で使った造語ですが、テレビゲームや携帯メール、パソコンといった電子機器の使いすぎによって、脳に悪影響を及ぼすと当時はマスコミでも盛んに取り上げられ、それに納得する人も多くいました。
例えば、以下のような点がメリットとして挙げられています:
2次元の画面の中で、ブロックを積み上げることで大きな城を作ったり、自分の畑を耕したりするといったゲームでは、空間把握能力が高まる
ゲームオーバーにならないように注意深く進めていくことによって、集中力が高まる
ロールプレイングゲームのように、登場人物のセリフを読むことによって読解力が高まる
何度も失敗しながらもゲームの課題をクリアできたことによる達成感を感じ、努力しようという意識が高まる
友達同士で協力しながら進めていくタイプのゲームで社会性が高まる
指先を巧みに動かすことによって脳が活性化される
試行錯誤することで、考える力が高まる
課題をクリアするために、ゲームの中で起こった出来事や見たもの、登場人物のセリるを覚えておこうとすることによる記憶力の向上
また面白いことに、最近のツイッターでは、日常的な景色に対する見方が、ゲームをやる人とそうでない人で全く異なることが話題になっています。
上手につきあう
親としては、子供が暴力的な戦闘ゲームやゾンビが出てくるような恐ろしいゲームをやっていると、「凶暴な子になるのでは?」「ゲームの世界と現実の世界を混同してしまうのではないか?」あるいは「目が悪くなる」「もっと体を動かすような遊びをしてほしい」と思うでしょう。しかし、医学的にはゲームをやることによる悪影響というのは科学的には証明されていないのです。
デジタル化が進む現代において、子供のうちからゲームやコンピューターの操作に慣れ親しんでおくことは、将来的にはメリットになるのかもしれません。敢えて、今回はゲーム脳という言葉が誤解を招いている点について述べましたが、決して積極的にゲームを勧めているわけではないこと、勉強と運動の次に娯楽があることをしっかり心に留めて頂きたいということをお断りしておきます。
ゲームのほかにもさまざまなメディア(テレビや携帯、スマホ)との上手な付き合い方については、こちらの記事も参考にしてください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。