舌小帯短縮症とは?
難しそうな病名ですが、よく言う「舌たらず」を指します。乳児の1~3%くらいの割合で、男の子に多くみられます。
軽度の場合は、舌先を使って発音するような「ら行」、「さ行」「た行」などの言葉を早口で言おうとすると舌がもつれてしまいますが、日常生活に問題はありません。中程度とは、発音の問題以外にも、舌先を持ち上げて上あごに付けたり、口内の横を舌先で触ったり、唇を舐めたりするのが難しい状態です。また、舌先が下歯茎に固定されて引っ張られるので、舌を前に出すと、舌先がハート形になります。重度の場合は、舌を下の歯よりも上に持ち上げたり、唇の外に出したりすることができない状態です。哺乳障害、発音障害、摂食・嚥下障害があり、滑舌が悪く、アイスクリームを舐めたり、硬いものが食べにくいといった問題もよく耳にします。中程度~重度の赤ちゃんの場合、乳房への吸いつきが悪く、哺乳が不十分で体重が増えなかったり、舌をうまく使えずに歯茎で乳首を噛むようになったり、発話ができる時期(3歳~5歳)になっても、舌がもつれて発音がうまくできなかったりします。
治療方法
舌の裏側には、「舌小帯(ぜっしょうたい)」と呼ばれるヒダがあります。ちょうど舌の裏の真ん中から舌に向かっている細いヒダです。舌小帯が短い(舌小帯短縮症)は、先天性の病気で遺伝することがあります。舌小帯の長さが短く、下歯茎に癒着している状態なので、軽度の場合は、舌を動かすトレーニングを行うことで改善する場合もありますが、基本的な治療方法としては、舌小帯のヒダを切る手術を行います。
乳幼児の場合は、哺乳に問題があれば全身麻酔で切開することになりますが、通常は、5~6歳くらいに切開し、局所麻酔だけで10分程度で終了し、少しの切開で十分な場合は縫合も必要ありません。術後当日に柔らかいものを食べることができますし、翌日には痛みもなくなります。術後は舌を動かすトレーニングを数か月行って、発音を改善してゆきます。
切開が必要な場合は、提携の病院をご紹介いたしますので、気になる症状があればご相談ください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。