歩き始めの乳児や、活発に走り回る幼児など、子どもはよく転んで顔をゴーンと打ったりするものです。その時に、運悪く前歯の辺りを打ってしまうと、上唇の裏にあるヒダ(上唇小帯と言います)を切って、口の中がかなり出血します。口の中を切ると、大げさなくらいにかなり出血しますが、鼻の下から上唇の辺りを数分間、指で押して圧迫すれば血は止まります。また、切れてしまっても翌日には白くなって再生するので問題はありません。
上唇小帯は、上唇と歯茎をつなげるスジのような組織で、通常は真ん中についています。大人になると、上唇小帯は短く、ほぼ見えない程度に小さくなるのですが、生まれつき上唇小帯が長すぎたり、太かったりすると、ミルクの飲みが悪くなったり、ヒダの隙間に食べかすが溜まって歯磨きしにくく虫歯になりやすいといった問題があります。通常は、成長するにつれて上唇小帯は短くなっていくのですが、前歯が永久歯に生え変わるまでに上唇小帯が長い(太い)ままだと、すきっ歯(前歯の間に隙間ができる)になり、歯並びに影響が出るので、上唇小帯を切除するという選択肢もあります。
ご心配な方は、クリニックにご相談ください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。