人間だれでも運動したり、暑い場所へ行けば、体温調節のために汗をかきます。しかし、特に何も運動もしていないし、暑くもないのに、極度の汗をかく人がいます。これは多汗症といって、精神的なストレスや体質、肥満、食生活、ホルモンバランスの崩れなど、様々な要因があって、異常に汗をかいてしまう病気です。
多汗症の中で、緊張すると手のひらや足の裏、脇の下に多くの汗をかく人がいます。ペンを握っていたら、汗ですべったり、紙が汗でぬれて破れてしまったり、手の平から汗がしたたり落ちる人もいます。また、脇の下から汗がどんどん出て、ワキパットもぐっしょり、洋服まで染み出て、したたりおちるという方もいます。
治療法は?
手の平や足の裏に限定した多汗症は、掌蹠多汗症と呼ばれます。治療方法には、いくつかありますが、発汗を抑える作用のある塗り薬(塩化アルミニウム)という薬があります。これは市販の制汗剤と良く似ていますが、塩化アルミニウムの濃度が違います。汗を抑えたい場所に、寝る前に塗布し、翌朝洗い流します。これを1週間程度繰り返せば、汗が止まるようになります。ただし、この薬は塗り続けないと、また汗をかくようになるので、永続的な治療とは言えません。
また、多汗症の原因が精神的なストレスや自律神経のバランスが崩れていることによる場合があります。その場合には、グランダキシンという内服薬があります。これは、自律神経を調整し、発汗そのものに作用して、極度の緊張感や不安感を取り除くものです。
内分泌代謝異常、神経疾患などの原因がないにも関わらず、両脇から多量の汗が出てしまう症状は、 原発性腋窩(えきか)多汗症 と呼ばれます。 原発性腋窩多汗症 について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
人によって多汗症の原因はさまざまです。全身発汗が多い場合、睡眠中も手足の発汗が多い場合は甲状腺機能が亢進(バセドー病)や他の内臓疾患の可能性もあります。気になる方は、早めにクリニックにご相談下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。