おたふくかぜは、ムンプスウイルスによって感染する病気です。冬から春にかけて、幼稚園・保育園や小学校などで流行がみられます。一生のうちで一度でも感染すれば、生涯免疫が出来るので二度とかかることはほとんどありません。乳児は感染しても症状が出にくく、腫れも少ないために、おたふくかぜだったことに気が付かないケースがありますが、乳児がかかることは極めて稀です。
症状と対処
ムンプスウィルスが体内に入ると、耳の下の唾液腺である耳下腺という部分が腫れて「おたふく」のお面のような顔になることから、通称「おたくふかぜ」と呼ばれています。
感染すると、耳の下、頬の後ろあたりが腫れてきて痛みます。幼児の場合は、はっきりとした症状が出にくいのですが、なんとなく顔の周りが普段よりずんぐりしていたり、エラが張っているような感じで、食べるのを嫌がるようなら、おたふくかぜの疑いがあります。片方だけしか腫れない子もいれば、あごの下までひどく腫れる子もいます。
腫れの度合いによってまちまちですが、通常は1週間~2週間前後で自然にひいてきます。耳下腺が腫れている間は、顎を動かして噛むと痛いので、食欲が落ちることが多いようです。熱は出る子と出ない子がいますが、それほど高熱が出ることはなく、発熱しても3日程度で下がります。
おたふくかぜは、飛沫や接触によって感染します。感染してから発症するまでが比較的長く、15日~21日の間潜伏します。耳下腺が腫れている間は、人にうつす可能性がありますので、発病後1週間~10日間は登園・登校を控えましょう。
おたふくかぜはウィルス性の病気なので、抗生剤は効き目がなく、またウィルスの増殖を抑えるような特効薬もありません。腫れの痛みを和らげる鎮痛消炎剤や解熱剤など、症状を和らげるお薬を服用しながら、家で安静にして自然に治るのを待ちます。時々、耳下腺に細菌の二次感染を起こすことがあるので、その時は抗生剤を処方します。
3日以上経っても腫れがひかなかったり、激しい頭痛、嘔吐やけいれん、高熱が続くようなら、髄膜炎などの合併症が疑われますので、早めに受診して下さい。時々、合併症として難聴、睾丸炎・卵巣炎を起こすことがあります。
家庭でのケア
耳下腺が腫れている間は、喉ごしが良く、噛まずに食べられるようなスープやゼリー、ヨーグルト、プリン、とうふなどを、少しずつ食べさせます。酸っぱいものや刺激の強いものは、痛みを悪化させるので避けましょう。また、頬に冷却シートを貼ったり、冷たいタオルを当てたりして冷やすと痛みが和らぐので効果的です。入浴は熱が高くなければ軽くシャワーを浴びる程度なら大丈夫です。
予防接種
おたふくかぜは任意接種で1歳から受けることができます。生ワクチンで、接種から2週間後にまれに発熱したり、耳下腺が軽く腫れることがありますが、重大な副作用の心配はありません。
また、きょうだいがいる場合は、発症してから予防接種を受けても既に手遅れで、感染は避けられませんので、あらかじめ予防接種を受けておくことをお勧めします。おたふくかぜにかかって、男の子では睾丸炎、女の子では卵巣炎を起こして、将来不妊の原因になることがありますので、是非ともワクチンは受けておきましょう。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。