日本脳炎という名前と聞くと、日本に特有の病気なのか・・?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。日本脳炎は日本だけでなく、東南アジアや中国、韓国、ロシア、オーストラリアなどで毎年1万人以上が感染している病気です。
日本脳炎は、ウィルスによって引き起こされる一種の急性脳炎です。家畜ブタの体内で増殖した日本脳炎ウィルスを蚊が吸って、人を刺すことによって感染します。ワクチンを接種していれば、感染を防ぐことができます。しかし、母体から免疫をもらうことはできませんので、乳児やワクチン未接種のお子さんを連れて流行地域に出かける際には注意が必要です。
主な症状
ウィルス感染した蚊に刺されてから、7~10日くらいの潜伏期間を経て発病します。初めは頭痛や発熱、全身の倦怠感から始まることが多く、乳幼児では嘔吐や下痢などの症状が見られることもあります。ほとんどの場合は、夏カゼのような症状だけで終わったり、けいれんを起こしても2~3分様子を見ていれば治まる熱性けいれんであることが多いようです。
ところが、1,000~5,000人に1人の割合で、ウィルスが中枢神経症状に達して40度前後の高熱を出し、筋硬直や意識障害、痙攣(けいれん)などの重篤な症状が現れる急性脳炎になります。致死率は約15%ですが、50%程度の人が回復しても脳に重篤な後遺症が残ると報告されています。
主な治療法
日本では、日本脳炎の流行がほとんど見られなくなりましたが、万が一脳炎を起こしてしまったら、有効な特効薬がないのがこの病気の恐ろしいところです。発熱や痙攣を抑えたり、脳の中の水(脳浮腫)を引かせたり、呼吸障害を緩和させるといった対症療法しか治療法がありません。
日本脳炎ワクチンについて詳しくはこちら!【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。