小学校高学年あたりから高校生にかけては、ニキビが顔やあご、首、背中などに出やすい時期です。ニキビに悩んでいる人は少なくないでしょう。
特に、赤くブツブツとなったり、固くなって膨れ上がったニキビは、跡が残ってケロイド状(肥厚性瘢痕:ひこうせいはんこん)になったり、皮膚がへこんだような跡(陥凹性瘢痕:かんおうせいはんこん)になって残ってしまいますので、早期に正しく治療することが大切です。
ニキビの原因
そもそもニキビは、毛穴に皮脂(皮膚のあぶら)がたまることで、皮膚が炎症を起こした状態です。特に思春期は、皮脂の分泌が多く毛穴に皮脂がたまりやすくなります。毛穴に面皰(めんぽう)という皮脂がたまって詰まると、その中でアクネ菌が増えて炎症を起こしてニキビになります。
気になるからといって触ったり、マスクで隠したり、髪の毛で覆って隠したりすると、患部を刺激してさらに悪化し、赤いブツブツとしたニキビ(丘疹:きゅうしん)や膿のたまったニキビ(膿疱:のうほう)になってしまいます。
また、自分で押しつぶして膿を出しても、毛穴に皮脂が残っていると、かえって炎症が悪化するのでやめましょう。さらにひどくなると、芯があるように固くなった状態(硬結:こうけつ)や結節(けっせつ)になります。
ニキビは、思春期や月経に伴う性ホルモンのバランスの変化に影響を受けます。こうした時期にニキビができやすくなるのはこのためです。
ニキビは思春期にだけできるものではなく、大人になってからも気をつけなければいけません。ニキビには食べ物、生活習慣、ストレスなどが大きく影響します。脂肪分の多い食べ物や甘い物は皮脂の分泌を過剰にします。また、喫煙やお酒の飲み過ぎ、寝不足などの生活習慣やストレスなどによって皮膚のターンオーバーが乱れ、毛穴の出口の角層が厚くなり毛穴の詰まりを引き起こします。その他にも、紫外線や化粧など、いろいろなものが影響します。
ニキビの予防
ニキビができるのは、肌が脂っこいからではありません。ニキビができたことで、脂っこいと感じるようになるのです。過度に洗顔するのは、皮膚に必要な水分を奪い、ニキビを刺激することになるので逆効果です。皮膚を健康な状態に保つことがニキビ予防なので、汗をかいたり、外出から帰った後にはよく泡立てた洗顔フォームで優しくなでるように洗って、よく流した後に十分に保湿するようにしましょう。
また不規則な生活やストレスは、ホルモンバランスを崩す原因となり、ニキビを誘発します。インスタント食品や脂肪分、糖分の多い食べ物に頼りがちでビタミンが不足すると、ニキビの原因となる皮脂の分泌が活発になり、ニキビが増えることになります。
逆に過度に食事制限してしまうと、皮膚に十分な栄養が行き届かなくなり、皮膚が乾燥して、皮膚のうるおいを守ろうという作用が働いて、皮脂を分泌するようになって、逆にニキビができやすくなってしまいます。
現代は、食事だけで十分な栄養を取ることが難しくても、サプリメントを活用することができます。ビタミンA、B2、B6、Cを補給することで、ニキビの原因となるさまざまな原因を緩和することができます。
さらに詳しくは、日本皮膚科学会のホームページをご覧ください。
ニキビの正しい治療法
従来は、化膿した赤いニキビは、抗生物質の内服や外用による治療が一般的でしたが、治療を中止すると再燃を繰り返す患者さんが多くみられました。これはアクネ菌を減少させて炎症を鎮める治療はできても、炎症を起こして赤ニキビになる前の初期のコメドや白ニキビの発生を抑える有効な治療法がなかったためでした。
こうした白ニキビに効果のある「アダパレンゲル」という外用薬が2008年に発売され、毛穴の皮膚を薄くしてニキビの元となる毛穴のつまりを取り除くことができるようになりました。アダパレンゲルは、白ニキビに強い効果がありますが、皮膚の角質を薄くするピーリング作用が強く、乾燥や刺激に注意が必要です。
白ニキビと赤ニキビが混在している状態には2015年に発売された「過酸化ベンゾイル」というピーリング作用とアクネ菌の増殖を抑え赤ニキビにも効果のある外用薬を使います。過酸化ベンゾイルは、顔以外の部分(背中など)にも使うことができます。稀にアレルギー反応を起こしてかぶれることがあり注意が必要です。以上の外用剤2種類で効果が乏しい場合はアダパレンゲル+過酸化ベンゾイル合剤を使用します。
使用方法
1日1回夜に外用します。使い始めの1~2週間は、外用部位がカサカサしたり赤み痒みが出たりする刺激症状があります。この反応は、保湿剤を併用したり、1日おきに外用したりして、途中でやめないで継続していくと2~3週間で和らいできます。人によって3週間から3ヶ月ぐらいでニキビが減少し効果がみられます。外用を継続していくことで新しいニキビの発生を防ぎ、1年以上使用すると、ニキビ痕も改善し、いい状態を維持できるようになります。また、有効な漢方もありますのでご相談ください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。