子どもと頭痛は無縁・・・と思っている人が多いのではないでしょうか?しかし、ここ数年、生活習慣の変化による慢性的な頭痛を訴える子どもが増えています。
片頭痛
頭痛にもいくつかの種類がありますが、最近の子どもに増えているのが片頭痛です。普段は何の症状もないのに、ひとたび頭痛が始まると、心臓が脈打つのに合わせてズキンズキン、ガンガンと激しく痛むのが特徴です。ちょっと頭を動かすだけでも痛くて、階段を登ったり、走ったりして動悸が激しくなると、さらに痛みがひどくなります。人ごみの中や明るい場所などで、騒音や光に反応して痛みがひどくなることもあります。頭の片側だけやこめかみの辺りが痛むことが多いのですが、ひどくなると頭全体に痛みが広がり、吐き気をもよおすこともあります。
片頭痛の原因は、不規則な生活やストレス、睡眠不足、家族の既往歴、気圧の変化など、さまざまな要因が考えられます。脳内や周辺の血管が収縮して狭くなって、それが拡張するときに、広がりすぎて近くにある感覚神経を刺激し、同時に血管の周辺に炎症が起こることで頭痛を引き起こすと考えられています。
片頭痛が始まったら、痛みのある部分を冷やして、暗くて静かな部屋に寝かせます。体を温めて血液の循環がよくなると、かえって頭痛がひどくなりますので、入浴は避けましょう。
片頭痛には、トリプタンと呼ばれる痛みを抑える特効薬があります。痛み始めてすぐに服用すれば、頭の血管に作用して、頭痛を早期に抑える働きがあります。通常、子どもには処方しない薬ですが、症状に応じて有効に使うこともありますのでご相談下さい。
緊張型頭痛
生活習慣の変化から最近増えてきたのが、緊張型頭痛と呼ばれる頭痛です。長時間同じ姿勢でじっとしていることによって、肩から首、頭へとつながっている筋肉が緊張して固まり、頭全体や、後頭部から首筋にかけて締め付けられるような重苦しい感じがします。テレビの見過ぎやゲーム・パソコンのやり過ぎ、姿勢の悪さなどが多くの原因となっています。また、ストレスが緊張型頭痛の原因になることもあります。
片頭痛は体を動かすと痛みがひどくなるのに対して、緊張型頭痛の場合は、肩や首をまわして体をほぐしたり、ゆっくりと入浴して肩や首を温めると、少し楽になります。痛みがひどい時は、鎮痛剤を使ったり、筋肉の緊張を和らげるためのビタミン剤や筋肉弛緩剤を処方します。
混合型頭痛
片頭痛と緊張型頭痛の両方が同時、または交互に出るのが混合型頭痛です。
群発性頭痛
群発性頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛に比べると、患者数は少ないのですが、突然、目の奥がえぐられるような、我慢できないほどの発作的な激しい痛みに襲われます。長い時は、3時間くらい痛みが続くこともあります。こうした発作的な頭痛は、年に数回程度で、いったん痛みが出ると、ほぼ毎日起こります。はっきりした原因はまだ解明されていませんが、目の後ろにある血管が腫れることで、周りの感覚神経が刺激されて激痛が起こると考えられています。群発性頭痛の痛みは、一般的な鎮痛剤では抑えることができませんので、酸素吸入やトリプタン注射などの専門的な治療が必要になります。
こんな時はすぐに受診しましょう!
頭痛が頻繁に起こったり、長引くようなら、そのうち治るだろうと過信せず、早めに検査を受けましょう。脳腫瘍などの重篤な病気が隠れている可能性があります。頭痛と同時に、次のような症状が見られる場合は要注意です。
- 高熱が続く
- 頭を打ったあとに繰り返し吐く(打った直後だけでなく、24時間以内に頭を打っていたら頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)のおそれがあります)
- 目の充血、目の痛み
- 意識障害、ろれつが回らない
- 突発的な激しい痛み
- 痛みが急激にひどくなる
子どもの場合は、痛みの状況を自分でうまく表現することができません。さっきまで、あんなに痛がっていたのに、クリニックを受診している時に限って、痛みがなくなってしまったということもあります。いつもと様子が違うと思ったら、どんな時にどの部分を痛がるのか、どのくらいの時間続くのか、どのくらいの間隔で起こるのか、など観察してメモしておき、診察の時に先生に伝えられるようにしましょう。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。