あまり聞きなれない病名かもしれませんが、これは10代前半の若い人がかかることの多い骨のガンです。
70~80%は、足の膝のあたりに腫瘍(骨の場合は肉腫と言います)が出来ます。それ以外では、肩の上腕骨辺りにできます。初期症状はなく、肉腫がだんだん大きくなってきて、周りの筋肉を押して、骨を破壊し始める頃になると、骨折したり、膝のまわりが膨らんで熱っぽくなったりなります。この頃には、すでに肉腫がかなり大きくなっており、悪性の場合、肺や肝臓、リンパ節などに転移している可能性が高くなります。
早期発見が大切
初期症状がないとは言いましたが、やはり膝に違和感があり、それをかばうような歩き方をするために、アキレス健や太ももなど、足の他の筋肉や部位に痛みが出るようになります。
一般的には、「どこかで足をぶつけたからかな?」とか「筋肉痛かな?」といった程度で、あまり気にならないでしょう。この時点でレントゲンを撮っても写らないので、肉腫は発見できません。そのうち、骨がもろくなってくると、例えばサッカーや野球など、スポーツをやっている時に強い痛みを感じて、骨折したのではないか?と思って、通常なら整形外科に行くことになります。しかしレントゲンでは肉腫は診断できないため、この時点で発見されなければ、そのままどんどん肉腫は大きくなり、他の臓器への転移の可能性がさらに高くなります。もし肺に転移してしまうと、生存確率はかなり低くなります。
骨肉腫の原因と治療方法
なぜ骨肉腫ができるのかについては、原因は今のところわかっていません。遺伝や食事とも関係ないと言われています。ただ、それほど発生率の多い病気でないことは確かです。
万が一、整形外科に行っても痛みが治まらない、様子がおかしいと感じたら、すぐにMRI検査と細胞検査のできる病院で検査を受けて下さい。血液検査でもある程度診断は可能ですが、最終的には良性か悪性かを判断するために、部位の一部を取り出して、組織検査を行う必要があります。
治療には、化学療法と手術、放射線治療を行います。まずは、他の臓器への転移を抑えるために抗がん剤治療を行います。抗がん剤は、副作用が強く、多くの場合が吐き気や食欲不振を伴い、毛髪が抜けてしまいます。その後、肉腫がある程度まで小さくなった時点で、肉腫の発生した骨と周りの筋肉を取り除く手術を行います。肉腫の広がっている範囲や部位によって、足を切断する場合もありますが、膝から下の血管を使える状態であれば、温存して、人工関節や自分の骨を使って再建治療を行います。
特に男の子のほうが発生しやすいと言われています。様子がおかしいと思ったら、早めにご相談下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。