あまり聞きなれない病名ですが、これはヤブカ属の蚊が媒体となって感染する感染症です。
軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛や筋肉痛、頭痛、だるさなどの症状が出ますが、デング熱と比べると38度5分を超えるような高熱が出ることは稀で軽症で済みます。潜伏期間は3日~12日で、発熱しても主な症状は、デング熱と比べると軽症で、4~7日間は症状が続きますが、解熱剤や鎮痛剤を飲んでいれば自然と回復します。
感染した人から人へ移ることはありませんが、稀に輸血や性交渉で感染する場合があります。健康な人が感染しても重症化することは少なく、逆に基礎疾患や免疫力が低下している人は死に至るケースもあります。ジカ熱に対する予防ワクチンや特効薬はありません。
流行している地域
アフリカ、中南米、カリブ海での流行が多くみられますので、こういった地域へ旅行に行かれる方は、長袖、長ズボンに虫よけなどをスプレーして蚊に刺されないようにしましょう。
特に最近ブラジルでの感染が急増しています。最近ブラジルから帰国された方の日本でのが発症ありました。海外に旅行されるかたは注意してください。
日本に生息するヒトスジジマカも媒体となり得ます。5月~10月頃まで活動し、ヤブや木陰などでよく刺されます。幼虫は雨水が溜まった容器(空き缶、プランターの下、古いタイヤ)などで生育します。
妊婦への感染
気を付けたいのは、妊婦への感染です。妊娠中に感染すると、お腹の赤ちゃんにも感染して小頭症児という先天性障害を起こす可能性が多くみられます。
健康な赤ちゃんは、頭の骨が2歳までに3倍の大きさにまで成長するため、頭蓋骨にはたくさんの骨がかみ合った形で脳を保護して、それぞれの間に隙間があいています。しかし、小頭症の赤ちゃんの頭蓋骨は、まだ脳が小さいまま、頭蓋骨が縫合してしまうため、小さな頭蓋骨の中で脳が十分に発達しなくなり、発達障害やけいれん発作、神経障害を引き起こします。小頭症の胎児は死産することも多く、生まれてきた後の治療としても外科手術による形成になります。
妊娠中の方は、なるべく感染地域への旅行は避けるようにしましょう。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。