ヘルペス感染症

単純ヘルペス

ヘルペスには、単純疱疹(たんじゅんほうしん)と帯状疱疹(たいじょうほうしん)の2種類があります。いずれもヘルペスウィルスと呼ばれるウィルスに感染することで発症する皮膚病です。

乳幼児によく見られる口の周りや口内に水庖ができるのは、ヘルペス性口内炎とも呼ばれる単純ヘルペスの一種です。ヘルペスウィルスは、ヘルペスを発症している人と接触することで感染します。感染すると、体内にウィルスが潜伏し、風邪をひいた時や疲れで体力が弱っている時に、水庖や発疹となって現れます。一旦治っても、体内(神経細胞)にウィルスが潜伏しているので、繰り返し発症することが多いのも特徴です。

免疫の弱い乳幼児が感染すると、時に高熱が出た後に、口の周りに小さな水を持った発疹が出来たり、口内炎が出来たりします。歯肉が真っ赤に腫れて、痛がってミルクを飲むのを嫌がるので、脱水症状にならないように気をつけて下さい。乳幼児の場合、ほとんどは親から感染するケースが多いので、ママやパパがヘルペスにかかっている場合は、赤ちゃんにキスしたり、タオルを共有したり、口を付けた食器を使い回さないように注意しましょう。

単純疱疹の場合は、放っておけば2週間くらいで乾いて、かさぶたになり、ポロっと取れて終わります。しかし、乳幼児の場合は、皮膚が柔らかくて敏感なので、放置しておくと、かさぶたになっていた部分の皮膚が凹型にくぼんで、シミのように跡が残ることがありますので、早めにクリニックを受診して、抗ウィルス薬やぬり薬を処方してもらい、早期に治療することが大切です。

帯状庖疹(帯状ヘルペス)

帯状疱疹は、大人になってから感染するという話を聞いたことがある方も多いと思いますが、実は誤りで、本当は幼少時にかかった「水ぼうそう」ウィルスが体内に潜伏していて、たまたま再発することが原因で発病するからです。

水ぼうそうも一種のヘルペスウィルスで、感染するとウィルスは体内(主に神経細胞)に長年潜伏します。風邪やストレスなどで体力が低下すると、神経の流れに沿って全身にわたって帯状の水庖が現れます。ピリピリした痛みを伴い、ひどい場合は発疹に服が擦れるだけでも激痛が走り、眠れないほどの痛みに苛まれる人もいます。

抗ヘルペスウィルス薬を内服(あるいは点滴)して治療すれば、ほとんどの場合は10日ほどで治りますが、高齢になればなるほど治りにくい傾向にあります。発疹が引いても、神経痛だけが何か月も残ることもあります。

新生児ヘルペス

母親がヘルペスウィルスに感染している場合、胎児がヘルペスに感染するリスクが高くなります。妊娠中に胎内で感染したり、出産時に産道を通る時に感染するケースもあります。時には、お見舞いに来てくれた人がヘルペスにかかっていて、キスなどの接触によって感染することもあるので注意しましょう。

新生児ヘルペスは、血液を介して全身の臓器にウィルスが広がり、哺乳力や活動力の低下、肝機能障害、呼吸障害などを起こします。また、ウィルスが中枢神経に達すると、脳炎を引き起こすことがあります。

新生児ヘルペスは、産後2週間以内に急激に進行し、何の治療も施されなければ、90%は死に至る恐ろしい病気です。早期発見で抗ウィルス剤を投与すれば、助かる確率は高くなりますが、多くの場合、残念ながら後遺症が残ってしまいます。いずれにしても、新生児にヘルペスが移らないように予防することが一番大切です。

もし妊娠中にヘルペスに感染してしまったら、妊娠の時期によって適切な治療を行います。抗ウィルス剤は、妊娠初期は胎児に影響が出る可能性があるので使いませんが、妊娠中期くらいになれば抗ウィルス剤を服用して治療します。

また、出産予定の3週間以内にヘルペスに感染していると、分娩時の赤ちゃんへの感染リスクを回避するために、帝王切開を選択する場合もあります。詳しくは、かかりつけの医師とよく相談して下さい。