風邪を引いたわけでもないのに、乾いた咳が長い間続いているといった症状はありませんか?もしかしたら、それはストレスによる咳かもしれません。
3週間以上続く咳の代表的な原因
インフルエンザやRSウィルスといったウィルス感染、マイコプラズマ肺炎や百日咳などの細菌感染、気管支炎、結核、肺がん、肺炎、また慢性的な咳としてはアレルギー物質に反応することによる咳喘息、気管支喘息などさまざまな原因が考えられます 。
その他の病気との見分け方
心因性嗽の場合、特に風邪をひいたり、発熱したわけでもないのに、日常的に乾いた咳が続きます。特に緊張した状態の時や日中に出ることが多く、逆に何かに集中している時や、夜寝ている間は出ないのが特徴です。
また、ストレスによる不眠症に伴うことも多くあります。さらに、環境の変化や季節の変わり目などが誘因となって咳が出る場合もあります。
こうしたさまざまなケースの中で、ストレス性の咳かどうかを診断するのは、非常に難しいのが現状です。まずは考えられる様々な病気をひとつずつ診断して鑑別を行い、それらが否定できてはじめて、心因性咳嗽(がいそう)を疑います。
原因
ストレスというのは、さまざまな形で体の症状となって現れます。
例えば耳鳴りがやまなかったり、突然腰に激痛が走って椅子に座れなくなったり、頭痛がひどくて一日中苦しんだりするのもストレスからくる症状かもしれません。
このストレスというのは、表面的にはとてもわかりにくく、正直なところ本人も気が付いていないことが多くあります。溜まったそれらのストレスが限界まで達すると、人間は本能的に「体に異変が起きている」という危険信号を耳鳴りや腰痛、頭痛という身体症状で知らせているのかもしれません。
過度のストレスは、自律神経のホルモンバランスも崩します。それが、脳幹にある咳中枢(咳を引き起こす指令塔)や気道粘膜を刺激して心因性咳嗽(がいそう)という症状になって現れるのではないかと考えられています。
治療方法
まずは症状を和らげるために対症治療(咳止めや気管拡張剤)で咳が治まるか試してみます。但し、こうした対症治療はほとんど効果がありません。やはり根本的な治療は日常生活の改善に尽きます。
特にこどもの心因性咳嗽は兄弟、友達関係や親との人間関係、学校生活での問題など様々な理由で起こります。これらの原因を探り当ててそれを取り除く努力をしましょう。こどもには精神を落ち着かせたり、ムズムズした咳刺激を和らげる効果のある「漢方薬」があるので一度ご相談下さい。
またストレスを発散するには、体を動かすことが一番のおすすめです。
結局、心と体はひとつであり、体を動かせば、自然と心も和らぐものです。大人では、お風呂上りにちょっとストレッチするだけでも、とてもリラックスできます。お天気の日にぶらぶら散歩してみたり、たった10分でも自分だけの時間を作って好きなことをしたり、お友達に電話したり、ぼんやりテレビを見たり、好きな音楽を聞いたり、アロマの香りに癒されたり、人それぞれにリラックスする方法を見つける事が大切です。
また、育児中のお母さんたちに心因性咳嗽が起きたら、自分の時間がなかなか持てないことが一因かもしれません。なかなか寝てくれない赤ちゃんにイライラしたりすることもあるでしょう。また特定のお母さん同士の付き合いがストレスになることもありますよね?そういった時は、地域のコミュニティセンターに出かけて他のお母さんたちと交流して悩み事を共有したり、思い切って子どもをデイケアなどに預けて自分だけの大切な時間を週に1回でも作ってみてはどうでしょうか?
子育ては自分だけが頑張らなくても、助けてもらえる力、借りられる力は全部上手に利用して、楽しみながらやってみて下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。