薬と母乳

授乳中のママたちからよく聞かれるのは、「授乳中なんですが、薬を飲んでも大丈夫でしょうか?」という質問です。

日本では昔から授乳時期の薬の服用をタブー視する傾向がありますが、結論から言えば、必要以上に心配したり、怖がることはありません。薬を飲むことを我慢して、お母さんの体調が著しく悪くなるようなことがあれば、そちらの方が問題です。基本的に、クリニックで処方する薬は大丈夫ですが、たしかに授乳期間は避けたほうがよい薬や予防接種などがありますので、まずはクリニックに相談して下さい。

母乳のメリット

ご存知の通り、母乳育児には様々なメリットがあります。母乳には赤ちゃんが発育するための栄養素がたくさん含まれており、様々な免疫や抗アレルギー物質も含まれています。また、母乳は消化が良いので赤ちゃんの未発達な胃腸系への負担が少ないのも利点です。

そして、一番大切なことですが、授乳という行為を通じて、お母さんと赤ちゃんの間に深い愛情が生まれ、赤ちゃんの情緒が安定します。赤ちゃんの骨密度が増加するという報告や、お母さんの乳がん予防になるとも言われています。

授乳中の薬

お母さんが薬を飲むとその薬は母乳にも分泌されますが、ほとんどの場合、母乳の中に分泌される薬の量はお母さんが飲んだ薬の量の1%以下ですので、赤ちゃんに与える影響は非常に小さいと考えられます。但し、薬の中には授乳期に飲んではいけないものがあるのも確かですので、具体的な薬の服用については医師に相談して下さい。

日常で使われる薬

風邪薬、抗生物質、胃腸薬、下痢止め、ビタミン剤、消炎鎮痛剤、解熱薬、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、抗菌薬、頭痛治療薬などの一般的な薬は、安全性も高く、基本的には問題ありません。

高脂血症治療薬、喘息治療薬、甲状腺ホルモン薬などについても、授乳中に服用しても問題のない薬が数多くあります。
とは言っても、必ず医師に相談することをお勧めします。

注意が必要な薬

抗がん剤、モルヒネ等の麻薬、放射性物質などは母乳の中に分泌される量が多く、副作用がある為、授乳期間の服用を避ける必要があります。

予防接種

一般的に、インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンは問題ありませんが、風疹・麻疹水痘おたふくなどの生ワクチンについては個別にご相談下さい。

タバコ

タバコは絶対に吸わないようにしましょう。母乳を通じてニコチンが赤ちゃんの体内に入ると、発育障害や、受動喫煙による呼吸器障害・感染が起こり、非常に悪影響を及ぼします。赤ちゃんから離れて吸っても、唾液や汗にニコチンは出ている事を忘れないで下さい。

当クリニックでは、赤ちゃんの診察と同時にお母さんの診察もしています。赤ちゃんにとって最も影響の少ない薬を処方します。また、薬を飲む場合は、「授乳直後」に服用するのが理想的です。薬の服用後3~4時間をピークに(6時間くらいまで母乳中に薬剤は認められるので)、この時間帯の授乳はできるだけ避けたほうがよいでしょう。

不必要な薬は飲まないにこしたことはありませんので、まずはクリニックにご相談下さい。