最近は、手洗いとアルコール消毒が当たり前の世の中になりました。外出先では、いたる所でアルコール消毒を行い、帰宅したら手洗い、食事の前に手洗い、身の回りの物の消毒・・・などなど。また、除菌シートや除菌スプレーを多用している人も多いかもしれません。
コロナ予防で手洗い・消毒が頻繁になったことで、手の「湿疹」や「ひび」や「あかぎれ」、「ささくれ」などの手荒れに悩む人が増えています。
手荒れの原因は乾燥
手荒れの多くは、肌の乾燥が原因です。
肌の表面には、肌を乾燥や刺激、感染などから守る「皮脂膜と角質層」という厚さ0.02mm程の薄い膜があります。「皮脂膜」は、汗腺や皮脂腺から分泌される汗と皮脂が混ざり合った天然の保湿クリームのようなものです。水分をキープしているのは、皮脂膜の下にある「角質層」で、この角質層が20~30%の水分を含んでいれば、肌はうるおっている状態です。
通常は、皮脂膜が角質層にフタをして保護することで、肌のうるおいを保っているのですが、空気の乾燥や冷えによる血行不良、手洗い、石けん、アルコール消毒などの刺激によって、このバリア機能と保湿機能が低下すると、肌が乾燥して、表面がカサカサになり、手湿疹やあかぎれ、ひび割れを起こしてしまいます。
また、手荒れによる「かゆみ」で掻いたり擦ったりすると、肌のバリア機能がさらに壊れて乾燥しやすくなり、また表面に細かい傷ができることで、そこから細菌やウィルス、微生物、化学物質が侵入して炎症を起こしやすくなります。
手荒れのケア
こまめに保湿剤を塗ることで、肌のバリア機能を補って水分が逃げていかないように保護します。特に、子どもは肌のバリア機能が弱いので、しっかりとした保湿が必要です。
手荒れの程度や、かゆみ、痛みに応じて、保湿・保護成分の高い、炎症を抑える軟膏を処方します。少量を手に取って、薄くのばして塗布しましょう。ワセリン入りのしっとりとした軟膏は、塗った直後のベタベタした感じが気になるかもしれませんが、保湿効果は抜群です。
ひび割れやあかぎれで痛みが強い場合は、ステロイド剤の入った軟膏や、傷に貼るテープを処方します。
以下は、日常生活で気をつけるべきポイントです。
- 手洗いの水が冷たすぎたり、熱すぎたりすると、それが刺激になってさらに肌の皮脂を奪ってしまうので、ぬるま湯で手洗いするようにしましょう。 水仕事をする際には、ゴム手袋をはめるなどして、なるべく肌に刺激を与えないようにしましょう。
- 液体せっけんは、洗剤濃度が高く、荒れた手を刺激する場合があるので、泡ソープを使うほうがよいでしょう。
- 手が濡れたままにしていると、手の表面についた水分が蒸発する時に、肌のうるおいまで一緒に蒸発してしまうので、手洗いの後はしっかり水分を拭きとって、保湿剤を塗るようにしましょう。
- また、手荒れがひどい時にはアルコール消毒は、なるべく控える方がよいでしょう。 アルコール消毒は使わなくても、手洗いを丁寧に行うことで十分にウィルスを除去できます。
石けんやハンドソープで10秒もみあらいして、流水で15秒流せば、残存ウィルスの数は約0.01%に減ります。流水で流すだけでも1/100に減らすことができます。
詳しくは厚生労働省の感染防止対策パンフレットを参考にしてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000645359.pdf
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。