川崎病

「川崎病」という名前から連想して、神奈川県川崎市の大気汚染による公害病だと勘違いしている方も多いかもしれませんが、川崎病は、1960年代に川崎富作という先生が発見されたことから名付けられた病気です(正式名は急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群)。英語でもKawasaki Deseaseと呼ばれ、世界的にもその名前で認知されています。4歳以下の乳幼児がかかることが多い病気で、「子どもの心筋梗塞」の原因になる事で一躍脚光を浴びるようになりました。

はっきりした原因は未だ解明されていませんが、通説では免疫システムが異常に働いて、自分自身で血管組織を傷つけてしまうのが原因ではないかとされています。

ウィルスや細菌に感染すると、白血球が増えて体内に侵入してきたウィルスや細菌を退治しようとします。しかし、これが過剰に作用してしまうと、白血球が出す酵素が過剰に分泌され、全身の血管壁に炎症を起こします。

この血管の炎症が、心臓の表面を流れる冠状動脈という心臓に酸素と栄養を送りだす大切な血管で起こると、血管壁が厚くなり、血管にコブができたり(動脈瘤)、冠状動脈の構造が変化します。川崎病にかかった患者の10%程度が、このような冠状動脈障害を残してしまいます。

多くの場合は、冠状動脈のコブも小さくなり、変化していた血管も自然と正常な大きさに戻るのですが、まれに血栓(血の塊)が出来てしまって血流を塞ぎ、心筋梗塞で死に陥るケースがあります。

初期~急性期の症状

突然、38度以上の高熱が出て、5日間ほど続きます。舌のブツブツした部分が、イチゴ状に隆起したり、唇が真っ赤に腫れたりします。目が充血し、のどが赤くなり、手や足のひらが赤くなって、手足に発疹が出ます。首のリンパ節がはれることもあります。また、熱が下がると、指先の皮がむけてくるのが特徴です。症状には個人差があるので、これらの症状が全部出るわけではありません。

主な治療法

川崎病は、根本的な原因がわかっていないため、特効薬があるわけではありません。抗生物質も無効です。基本的には、症状に応じた対症療法を行います。

発病から1週間以内に川崎病であることが判明すれば、ガンマグロブリンと呼ばれる血液製剤を大量投与して、冠状動脈にコブができるのを抑制します。

ほとんどの場合は、1か月ほど入院して、ガンマグロブリン治療の後にアスピリンを服用し、全身の炎症を抑えるための治療をすれば、炎症も収まり回復に向かいます。1か月経って、冠状動脈の障害もなく、その他の炎症反応もなくなれば、特に薬を飲み続ける必要はありませんが、後になって冠状動脈に障害が出る場合があるので、1~2年毎に定期検診を受ける必要があります。

万が一、冠状動脈に障害が残ってしまった場合は、心筋梗塞になるのを防ぐために、血栓予防の目的でアスピリンを飲み続けなければなりません。さらに血管の狭窄が進むようなら、カテールという管を血管に通して、狭くなった部分に風船を入れて膨らまし拡張させたり(バルーン法と言います)、心臓のバイパス手術を行う場合もあります。

川崎病は乳幼児に多い病気です。いつもと違って高熱が続いたり、おかしいなと思ったら、ぜひ早めに相談してください。