PFAPA症候群の日本人の発症率は、1万人に1人と言われています。5歳以下の乳幼児が発症することが多く、3~8週間に1回程度の頻度で周期的に39度以上の高熱が4日~5日間続きます。特徴としては、ウィルスや細菌に感染していないのに、周期的に高熱が出ること、発症時には以下のいずれかの症状が出ることです。
周期性発熱(Periodic Fever)、頸部リンパ節炎(cervical Adenitis)、咽頭炎(Pharyngitis)、アフタ症(Aphthous stomatitis)の4つの主な症状の頭文字からPFAPA症候群と呼ばれています。
その他、全身倦怠感、関節痛、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢などの症状が出るお子さんもいますが、発育や発達への影響はなく、発症していない期間は全くの無症状です。また重篤な合併症もありません。
PFAPA症候群は、「自己炎症性疾患」です。何らかの理由で自然免疫(生まれつき持っている免疫)がうまく作用しなくなり、何にも感染していないのに、体が勝手に炎症反応を引き起こし高熱が出ます。いつ発作が始まるか、何が発作を誘発するかについては解明されていません。1999年に提唱されたばかりの新しい病気で、原因や治療法はまだ確立されていませんが、多くの場合は成長とともに発作の周期が長くなり、症状も軽くなり、10歳前後には自然に症状がなくなると言われています。感染症ではないため、抗生剤は効きません。
PFAPA症候群の治療において重要なことは、いかに発熱発作をコントロールするかです。現時点で有効な治療法は3つありますが、ひとつは、発作時に少量のステロイド(プレドニン)を服用して炎症を抑えて解熱させることです。飲めば数時間で熱が下がりますが、発作の周期が短くなるというデメリットがあります。また、シメチジン(ヒスタミン受容体拮抗薬)には、免疫調節作用があり、一部のPFAPA症候群の患者さんに効果があるとされています。
発熱発作の頻度が多く、保育園・幼稚園や学校に行けない、家族の日常生活にも支障をきたす場合には、外科手術による扁桃摘出を検討することになります。かなりの患者さんに効果が認められますが、多くの場合は10歳を過ぎた事から自然治癒することや、お子さんの年齢や症状、全身麻酔の手術のリスクを含めて検討すべきでしょう。
お子さんが発症するきっかけやタイミング、薬の効果、周期の間隔など、普段から様子を観察して記録して、受診時にお持ちください。お子さん一人ひとりにあった治療方法を相談させていただきます。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。