全世界で1万人以上を超える感染者が出ているエボラウィルス。
日本国内ではまだ感染はありませんが、万が一に備えて、エボラウィルスが引き起こす症状や病像について知っておきましょう。
主な感染源
エボラウィルスに感染した動物の死骸に接触したり、肉を食べたりすること、あるいはエボラウィルスにかかってしまった患者の体液(血液、排出物、嘔吐、分泌物、汗)に無防備に接触、使用した医療器具等が媒体となり、傷口や鼻、喉などの粘膜から感染します。空気感染はありません。
エボラウィルスは、感染者の体外に出た後も数日間生きていますので、感染患者を隔離することが重要です。
主な症状
ウィルスに感染してから通常2日~3週間程度潜伏した後、急な発熱、頭痛、喉の痛み、全身のだるさ等のインフルエンザと似たような症状があらわれ、その後、嘔吐、下痢、血圧低下、消化機能の低下、貧血等がの症状がみられます。
エボラウィルスは、体内でウィルス自身が複製して増殖し、正常な細胞を破壊する特定のたんぱく質を作ります。そのたんぱく質が血管内の細胞にくっついて、肝臓、腎臓、脾臓、脳などへ広がります。重症化すると目や鼻などから出血しはじめ、ウィルスが止血作用も抑えてしまうために血が止まらなくなり、昏睡状態に陥って、多臓器不全と出血性ショックで死に至ることがあります。
1976年に最初にザイール(現コンゴ民主共和国)で発見されたエボラウイルスの致死率は、90%という驚異的な数値でしたが、今流行しているウイルスは、約60%と言われています。また、90%の致死率といっても、まったく治療をしなかった場合のことです。
主な対処方法
今のところ、エボラウィルスに対する特効薬もワクチンもありません。
一番大切なことはウィルスに感染しないことです。空気感染はないわけですから、兎に角感染者に接触しないことが重要です。西アフリカ周辺諸国に滞在して出張や旅行などで帰国し、発熱などの症状があったら直ちに医療機関と連絡を取ってください。
横浜市では、横浜市民病院が受け入れ体制を取っています。
また、もし身内でそのような人の看護した際に使用したタオルや感染者に接触しないこと、万が一家族が発症したらすぐに病院へ連れて行き、隔離することです。また、家庭内で看護した際に使用したタオルや患者の嘔吐物、唾液、鼻水が付着したものは、ビニール袋に入れて密封し、すべて処分しましょう。
残念ながら確実な治療法は今のところありません。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。