昨今、世間を騒がせている「デング熱」。正しい知識を持って対処すれば決して恐ろしい病気ではありません。
デング熱は、デングウィルスを持った蚊に刺されることで感染します(デング熱を発症した人から人への感染はありません)。ウィルスを持った蚊に刺されたからといって、100%発症するわけでもなく、50~80%以上の人は何も症状が出ないと報告されています。
主な症状
デングウィルスには4種類ありますが、どのタイプにかまれても症状は同じです。かまれてから3~7日程度潜伏した後に、急な発熱で始まり、発疹、頭痛、吐き気、全身の痛み、嘔吐等の症状が続きますが、通常は1週間程度で熱も下がって回復します。熱が下がった頃に、皮膚の下にある毛細血管から出血して、広範囲にわたって皮膚が赤くはれたようになることもあります。インフルエンザに似たような全身の倦怠感、高熱を発症することが多いようです。
まれに、デング出血熱といって、熱が下がった頃に、血漿(けっしょう)が血管から漏れ出して、鼻血や下血、血便等を起こして、血圧が低下し、もれた血漿が原因で、肺やお腹に水が溜まり、デングショック症候群と呼ばれる病態になる場合があります。特に、妊婦さんや乳幼児、高齢者の方は、ショック状態に陥るリスクが高くなると言われていますので注意してください。
診断と治療法
デング熱かどうかの診断は、血液検査で判断するしかありません。また、デングウィルスに対する特効薬はないので、症状を緩和する対症療法となります。
40度を超える高熱が出ることもあるので、解熱剤で熱を下げることと、十分な水分補給をすることが大切です。痛みがひどい場合は、痛み止めを処方します。
自己判断で市販のロキソプロフェンやアスピリンを飲むと、出血が悪化する可能性があるのでやめましょう。もし水を十分に飲めない状態の場合は、点滴が必要になります。
蚊は昼間に活発に活動すると言われていますので、昼間の暑い時間帯に外出する場合は、なるべく蚊の多い場所に行かない、長袖を着て皮膚の露出を少なくする、虫よけをつける、携帯用の蚊取り線香をぶらさげる等の工夫をして、蚊に刺されないようにするのが一番です。
最新情報は、厚生労働省のホームページをチェックしてみてください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。