
昨今は、昔と比べて食物アレルギーのお子さんが増えています。
ファストフードや共働き夫婦による外食依存、肉を中心とした食生活、アルコール、たばこの摂取など、色々な原因が考えられますが、子供が生まれてくるまでは、どんなアレルギーを持っているかどうかわからないのが現状です。
ただし、遺伝性もあり、両親のどちらかがアレルギー体質だと、やはりアレルギーをもった子供が生まれる確率は、全くアレルギーのない両親から生まれてくる子供よりは高くなります。
卵アレルギーの主なアレルゲンは、黄身ではなく、卵白(白身)の方です。学術的には、オボアルブミンと呼ばれる抗原ですが、これにアレルギー反応を起こすと、アトピー性皮膚炎や喘息、アレルギー性鼻炎など、様々なアレルギー症状を引き起こします。
卵アレルギーは多くの場合は、新生児~年長くらいまでのお子さんに多くみられます。この年代の子供は、消化器の発達が未熟なため、抗原が簡単に腸の粘膜を通過して卵白に異常に反応してしまう子がいます。しかし、小学生~中学生くらいになれば、消化器官が発達してくるので、少しずつ卵を食べさせることで、様子を見ながら、卵アレルギーを克服できるケースが多いのも事実です。
まずは、離乳食で卵を開始する時は、少量から始めましょう。最初は、ゆでた卵の黄身だけをほんの少しだけ、おかゆに混ぜてみる。大丈夫そうなら、量をすこしづつ増やしてみる。ある程度大丈夫という感触を得たら、少しだけ卵白をおかゆやスープに混ぜてみる。もしそれで、口の周りが赤くなったり、じんましんが出たり、呼吸がおかしくなったりしないようなら、慎重に卵白の量を増やしていきましょう。アレルギーがないかどうか確かめながら行ってください。
特に、市販の製品には、卵白が使われているケースがあるので、原材料を確認してから購入するようにしましょう。本当に卵アレルギーがあるかどうか、という診断は負荷テストをしないとわかりません。血液検査だけではわからないということも理解しておいて下さい。
卵アレルギーの症状
食べてから、アレルギー反応が出るまでには個人差があります。強烈に卵にアレルギー反応を持つ子は、すぐに口の周りが真っ赤になったり、頬が赤くなったり、最悪の場合は呼吸困難に陥ることもあります。軽ければ、半日~数日後にほんの少しじんましんが出る程度で、直ぐに消えてしまいます。
市販の食品で気をつけるべきもの
市販の食べ物には、原材料や加工の過程で卵が使われている場合があります。代表的なものを以下に列挙するので注意してください。
- パスタ
- ラーメン
- ケーキ
- パン
- マヨネーズ
- お酢
- 生クリーム
- ホットケーキ
- ハンバーグ
- お好み焼き
- はちみつ
- 豚肉のミンチ(製造過程で卵を処理するものと同様の場合があるため)
- てんぷら粉
- ふりかけ
- おかし(ボーロ、クッキー、かりん糖、アイスクリーム、プリン、カステラ等)
- かまぼこ、はんぺんなどの練り物、ハム、ソーセージ
- 茶碗むし
- コンソメスープ
- 魚の卵
- 生そば
アレルギー検査
食物アレルギーを引き起こす「アレルゲン」を特定するための検査は、負荷試験(実際食べてみる)が基本です。医師の監視のもとに少しづつ食べながら、ゆっくり 時間をかけて症状の程度を見て判断するという方法です。
この方法は、かなりの時間と人の手間をかけて実施するため、入院して閾値(食べられる量を決める)を決めるのが一般的です。場合によってはアナフィラキシーを起こす危険性もあります。軽い症例では外来で実施することも可能ですが、かなりハードルが高いのが実情です。
そこで、一般的には、血液の抗体検査でアレルギーがあるかないかを判定する方法がよく使われています。また最近は、「アレルゲンコンポーネント」という、アレルギーを引き起こす食物抗原の特殊な部位を測ることができるようになり、ピーナッツ、クルミ、カシューナッツ、大豆、小麦アレルギーなどはかなりの精度で診断ができるようになりました。しかし、抗体が陽性でも必ずしも原因アレルギーとは言い切れず、やはり確定には前述の負荷試験が必要になるわけです。
多くの医療機関からよく聞く話ですが、血液検査といっても、乳幼児は血管が細くて、しかも見えにくいので採血がなかなか難しく、何度も穿刺して、こどもに負担をかけてしまうとのことです。また赤ちゃんの場合、免疫がまだ未発達なので血液検査では反応が出にくく、原因食物の結果がたとえマイナスでも、実際身体はアレルギーを引き起こす可能性はあります。(偽陰性)
当クリニックでは、詳しい問診とこれらの検査結果を参考にしながら、小児食物アレルギーガイドラインに記載のある、「経口免疫療法」に準じた正しい食の進め方の指導を、アレルギーエデュケーター(臨床アレルギー学会認定看護師)が時間をかけて説明しています(予約制)。ご希望の方は、受付にご相談下さい。

【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。