エピペンは、アナフィラキシーを起こした場合に、その症状を緩和する為の注射薬です。アナフィラキシーとはアレルギー反応が通常よりも激しく起こることで、呼吸困難や手足のしびれ、腹痛、嘔吐、全身にわたるじんましんなどの症状が短時間のうちに発症し、急激に悪化する状態です。
アナフィラキシーの主な原因は、アレルギー症状を引き起こす食べ物を食べたり、薬品の投与などよるものですが、ハチに刺された場合なども発症する可能性があります。症状がひどい場合には意識を失ったり、命にかかわることもありますので、このような状況になった場合すぐに医師に診てもらう必要がありますが、医師に診てもらうまでの間アナフィラキシー症状を緩和しショックを防ぐのがエピペンです。
自己注射薬
エピペンは自己注射薬と言って、医師がいなくても、緊急時にその場で本人や保護者などが打てる注射薬として認可されています。注射といっても医師が使う注射器のようなものではなく、針が見えないよう安全に配慮された設計になっており、筒状のケースを太ももに押し付けて注射をします。主成分はアドレナリンで、これを注射することによって気管支を拡張し、血圧を上げて、アナフィラキシーによる症状を緩和します。
エピペンの役割
エピペンはあくまでアナフィラキシーの緩和を目的としたもので、治療薬ではありません。エピペンを注射して症状がおさまったとしてもそれは一時的な症状の緩和に過ぎず、時間が経てば再び症状が悪化する可能性がありますので、必ず医師に診察してもらいましょう。 また、医師にすぐに見せられないような緊急時に使用するものなので、患者さん本人が常時携帯することが大切です。エピペンを処方してもらっても携帯していないという患者さんはかなり多いと言われています。イザという時に持っていなかったのでは意味がありませんので、必ず携帯してください。
エピペンを打てる人
エピペンは、処方された本人、保護者、学校の先生、保育士、救急救命士であれば、緊急時に打つことができます。エピペンを持つお子さんがいる家庭では、エピペンを携帯していることを学校や幼稚園・保育園に事前に伝え、緊急時の対応を相談しておいた方がいいでしょう。 また、学校や幼稚園、保育園では通常エピペンは用意されていません。学校でのエピペンの使用は、エピペンを処方された生徒に対して緊急時に行うのであれば許可は必要ありませんが、それ以外の生徒にエピペンを打つことは認められていないのです。
エピペンの処方
エピペンは一般薬ではありませんので、購入するには許可を受けた医師の処方が必要です。当クリニックでは、エピペンの処方が可能です。体重が15Kg以上の患者さんには処方ができますので、アナフィラキシーを起こす可能性のある人はクリニックにご相談下さい。有効期間がありますので、有効期間を過ぎてしまうと再度処方が必要です。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。