起立性調節障害

「うちの子は、座り込んでしまう」「朝起きられなくてグズグズしている」「朝礼で10分も立っていると、気分が悪くなってしまう」「何でも乗り物酔いするので困る」と、嘆いている保護者の方も多いのではないでしょうか?

特に、10歳を過ぎた頃から中学生くらいになると、こういった疲れやすい症状を訴える子どもが増えてきます。

昔は、単に体が弱いだけとか、怠けているだけ、だらしないと言って片付けられてきましたが、最近になってこれは「起立性調節障害」という病気であることが知られてきました。

思春期によく見られる自律神経失調症のひとつ

人間は、寝ている間やリラックスしている状態では、副交感神経が強く働いています。目覚めたり、起き上がったり、体を動かした時には、交感神経のほうが優位になって血管が収縮することで、全身に血液が循環するようになります。

正常な人は、立ち上がった時に交感神経が働いて下半身の静脈血管が収縮し、溜まっていた血液をポンプのように心臓へと押し戻して、頭へと循環させます。

しかし、起立性調節障害でホルモンバランスが崩れていると、副交感神経から交感神経への移行がうまく働かないため、副交感神経が優位なままの状態が続き、運動時に必要な血液量が全身にうまく流れません。

急に立ち上がった時に立ちくらみやめまいがするのは、ポンプ機能が働かず、下半身に血液がたまったまま、頭に血が回らなくなるからです。

また、寝起きが悪く、いつまでもグズグズしていたり、午前中に調子が悪いのは、交感神経への移行がスムーズに行っていないからです。午後になると、徐々に交感神経が働いて、やがて体のだるさや調子も回復してきます。

この病気が、中学生くらいに一番多く見られるのは、子どもの体から大人の体へと変化するこの時期に、自律神経のバランスが崩れ易いためです。

診断方法

次のような症状のいくつかに思い当たるなら、起立性調節障害が疑われます。

  1. 朝起きられない
  2. 午前中は頭がぼーっとして調子が悪い
  3. 立ち上がると、立ちくらみ、めまいを起こしやすい
  4. 立ちっぱなしだと気分が悪くなる、ひどい時には気を失うこともある
  5. 2階へ階段を上がるだけで、動悸、息切れする
  6. 顔色が悪い(青白い)
  7. 疲れやすい、ゴロゴロしていることが多い
  8. 乗り物酔いしやすい
  9. 食欲がなく、朝ごはんが食べられないことが多い
  10. 頭痛になることが多い

治療と予防方法

まず、家族や学校の周りの人たちが、この病気について理解してあげることが大切です。午前中、調子が悪くて学校を遅刻したり、休みがちになったりすると、周りからいじめられて、不登校へと発展してしまうケースもあります。調子が悪い時は無理強いしたり、追い詰めたりしないことです。学校の先生にも病気のことをよく説明して理解してもらい、体育を見学したり、長時間立つのを避けるように配慮してもらいましょう。

次に、日常生活では、規則正しく、きちんと食べ、十分な睡眠をとって、生活のリズムを整えましょう。そうすることで、自律神経のバランスを正常化されます。

また、めまいや立ちくらみで急に倒れたりしないように、立ち上がる前に足踏みしたり、足を組んで筋肉を動かすなどして下半身に溜まった血液の流れを刺激して、血液の循環を促進しましょう。また頭を低くしながら立ち上がると、頭に血が回りやすくなります。

気温が高い日は、血管が拡張していてポンプ機能が鈍くなりますので、あまり無理せず涼しい場所で過ごすようにしましょう。

起床時に飲んで血圧を上げる薬を処方することもできます。かなりの効果が期待できますので、是非一度ご相談下さい。