トゥレット症候群

かなり聞きなれない名前だと思いますが、これは1885年にフランスの神経科医ジル・ド・ラ・トゥーレット氏によって発見されたことから「トゥレット症候群」と名づけられた脳神経の病気です。簡単に言うと、発達障害のひとつで主に6歳~10歳までに発症することの多い脳機能障害です。 

日本ではまだ認知度が低く、チック症状が出ることから「自分の子育てがいけなかったのではないか?」と悩むご両親が多いのですが、その子に特有の症状をしっかりと見極めて正しく理解し、必要に応じた治療をすることが大切です。

主な症状

トゥレット症候群で最初によく見られるのは、まばたきの回数が多い、激しく頭を振る、何度も顔をしかめるといった頭部の多動性です。やがて、それが全身症状となってジャンプを繰り返したり、モノを蹴ったり叩いたり、何かの匂いを執拗にかぐといった行動を繰り返すようになります。またそれと同時に、必要以上に鼻をフガフガと鳴らしたり、咳払いを多くするようになったり、突然大きな声でわけのわからない奇声を発したり、同じ事を何度も大声で繰り返し言うといった「音声チック」が現れます。さらに年齢が高くなると、「バカ」や不謹慎な言葉を発したり、怪我をした箇所を何度もつついたりしてさらに傷口を悪化させたり、骨折するまでに痛めつける自傷行為につながっていきます。 
こうしたチック症状が1年以上続く場合は、トゥレット症候群と診断されます。

治療方法

トゥレット症候群は、大脳にある脳内神経伝達物質ドーパミンが過剰に活動することが原因とされていますが、詳しい理由はよくわかっていません。治療法としては、ドーパミンの分泌量を調整するための抗ドーパミン作用の強い神経遮断薬など薬を服用し、症状を緩和することくらいしかありません。また薬で完全に治るという保証がなく、むしろ別の病気を合併する可能性もあり、完治は非常に困難です。

だからこそ周りの理解が必要

日本トゥレット協会が設立されたのは2001年4月のことですが、日本ではまだまだ認識されておらず、さらに難病として指定されていないために、普通の人たちと同じ生活環境で、「挙動不審」あるいは「変質者」といった妙な偏見を持たれながら生きていかなければならないのが実情です。

また両親もまさか自分の子供がトゥレット症候群だとは知らずに、チックが出ると叱ってしまったり、強くしつけしてしまうことが多いのです。

思春期までに自然と症状がおさまるケースもありますが、こうしたチックが習慣性となって大人になっても症状に苦しんでいる人が多くいます。特に社会生活をしていると、突然叫びたくなる衝動が抑えきれずに我慢することができずに、一定の職につけないといった社会問題もあります。

こうした状況をふまえて、今私たちにできることは、こうした症状があるということを理解することです。またトゥレット症候群に悩む人は、自分にはどういった症状が出やすいのかを書き出して、近所や学校、職場などの周りに関係する人たちにあらかじめ伝えて、理解してもらうことで、症状が出ることに対する自分への苛立ちを軽くすることです。

またカウンセリングを受けて、自分の悩みを打ち明けて、専門化のアドバイスをもらうことで、心のケアをすることも大切だと思います。