てんかん

てんかんとは、痙攣(けいれん)発作が繰り返し(慢性的に)起こる病気です。高熱が出た時だけに痙攣する熱性けいれんや、ひどく泣き続けて興奮状態からひきつける憤怒痙攣とは異なり、特に熱があるわけでも興奮したわけでもないのに、突然けいれん発作を起こします。しかも、長期間にわたって、同じような発作が繰り返し起こります。

てんかん発作

てんかん発作を起こすと、突然倒れて全身をガクガクさせて(=けいれん)意識がなくなったり、泡を吹いたり、呼吸が弱くなってチアノーゼ状態になったり、背中がエビ反りになって硬直したりして、周囲の人を驚かせますが、発作そのものが命に関わることはほとんどありません。

以前は、発作時は舌を噛まないようお箸やハンカチなど咬ませるよういわれていた時代もありましたが、処置者が受傷する危険もある上、ハンカチなどを咬ませていたため吐いたものが気管や肺に入り、肺炎や窒息する危険があるので絶対にやめましょう。

発作が始まったらあわてず落ち着いて、転落などの2次災害が起こらないように安全な場所へ移動し、吐物で窒息しないよう顔を横に向けに寝かせましょう。

体をゆすったり、大声で呼んだりして刺激を与えると、かえって逆効果です。発作が収まるまでの時間を計って、もし5分以上続くようなら、救急車を呼んで受診してください。

てんかんの原因

てんかん発作を引き起こす原因は、脳の障害です。

正常な脳では、神経細胞間を電気的興奮が伝達される際に、興奮させる働きと興奮を抑える働きがバランス良く機能しています。しかし、脳になんらかの障害があることで、興奮を抑える機能がうまく働かず、過剰な興奮で脳神経回路がショートし、動作や意識に異常な反応を引き起こします。

脳の障害を特定するのは非常に難しく、分娩異常(低酸素状態など)、先天性の代謝異常や遺伝子の異常、内分泌異常、あるいは髄膜炎や脳炎、頭部の怪我など、さまざまな原因が考えられます。

てんかんの分類

てんかんは、原因と発作の範囲によって分類されます。てんかんの原因が明らかな場合「症候性てんかん」と原因が不明の場合「特発性てんかん」、また脳全体で起こっているのか(全般てんかん)、部分的に起こっているのか(部分てんかん)、発作の範囲によっても区別されます。

てんかんの診断

てんかんの診断には脳波検査は必須で、特有の脳波の異常が見られます。熱性けいれんやその他の似たようなけいれん発作と異なり、発作を慢性的に繰り返すといった症状があり、さらに睡眠時と覚醒時の脳波を測定して、てんかん特有の異常脳波が見られれば、てんかんが疑われます。

頭部MRIやCTで脳の精密検査を行い、脳に器質的な障害がないかどうか調べます。特に脳内に異常が見られない場合は、さらに血液検査や遺伝子検査を受けて、先天的な代謝異常や遺伝子異常がないかどうか調べることになります。

てんかんの治療

てんかんの治療は、根本的な原因となる脳障害を治すことではなく、基本的には抗てんかん薬という薬で発作をコントロールすることです。

抗てんかん薬とは、脳の異常な興奮を抑える薬です。てんかんは治りにくいと思われがちですが、規則正しく薬を飲み続けることで、てんかんの約8割は発作をコントロールすることができ、てんかんはある程度の期間発作が抑えられていると自然と起こりにくくなるという性質があるため、その半数以上は薬をやめても発作が起こらない状態になります。内服期間は、最短でも3年と長期間に渡って薬を飲み続ける必要がありますが、根気よく飲み続けることでほとんどが治ります。

注意することは、症状が良くなったからといって薬を自己中断するとリバウンドで発作を誘発することがあります。薬を中止する判断基準として2~3年間発作がなく脳波で2回異常がないこととされています。

また抗てんかん薬は、急には止めるのではなく、主治医の指示で6ヶ月ほどかけて徐々に減らしていきます。また子供は3年間でも身長や体重が発育しているので同じ量の薬を飲んでいても実質的には減らしているのと同じ効果になります。

抗てんかん薬は発作の種類に合わない薬を使うと逆効果になることがあります。専門医によって脳波やMRIといった検査を行い発作の種類や原因を分析し、てんかんの種類を特定することが重要です。

抗てんかん薬にはいくつかの種類があります。薬の効果には個人差があり、1剤で効かない場合は、2~3剤併用することもあります。服用量が多いことで眠くなったり、体質に合わずアレルギー反応(発疹など)が出たり、まれに腎障害や肝機能障害を起こすことがありますので、定期的に血中濃度を測定しながら、血液検査、尿検査を受ける必要があります。

抗てんかん薬の作用と副作用についてしっかり理解し、普段の生活で何かおかしな症状が見られたら迷わず受診するようにしましょう。また風邪などで他の病院にかかって抗生物質をもらったりする時にも、どの抗てんかん薬を服用しているのか名前を言えるようにしておきましょう。

薬でコントロールできない発作ような難治性のてんかんは、手術を行う場合もあります。ただし、誰でも手術できるというわけでもなく、発作の原因となる脳の部位が特定できること(部分てんかん)、切除しても脳に障害を残さないことなどが条件となります。

日常生活での予防

てんかん発作はウトウトしているときやボーっとしているときに起こりやすいものです。朝は早起きし、昼間は元気に活動して、夜更かしせず早く寝るといった日常生活のリズムを整えることでも発作を予防することができます。

また、発作の起こりやすい時間帯や状況を観察し、主治医に詳しく伝えることで治療の役に立ちます。発作が出なくなっても再発することがありますので、半年から一年に1回は脳波検査などの定期検診を受けるようにしましょう。

てんかんはきちんとした治療を根気よく続ければ、大半が治る病気です。てんかんと診断された家族のお気持ちは良くわかりますが、病気は病気として受け入れて正しく理解し、治療をしようという意思をしっかりもちましょう。