「赤ちゃんのおっぱいにしこりがあるのですが、大丈夫でしょうか?」
「まだ2歳にもなっていないのに、おっぱいが膨らんできました・・・」
「うちの子は男の子なのに、なぜおっぱいが膨らんでいるの?」などと心配して相談に来られるお母さんが時々いらっしゃいます。
さまざまな理由がありますが、新生児の場合は「乳房腫大」、2歳以下の女の子の場合なら「早発乳房」、思春期の男の子の場合なら「女性化乳房」だと考えられます。
新生児期の乳房腫大
赤ちゃんは生まれる前に、胎盤を通してお母さんの女性ホルモンももらっています。この女性ホルモンの刺激によって、生まれたばかりの赤ちゃんの乳腺が発達して膨らむことがあります。これは、魔乳(まにゅう)とも呼ばれ、男の子でも女の子でもなる可能性はあります。コリコリしたタコ焼きくらいの大きさになって、お乳が出ることもありますが心配ありません。無理に絞り出そうとすると、かえって乳腺を刺激してしまうことになるので、放っておくことです。特に治療の必要はなく、ほとんどが2~3週間くらいで自然消滅します。
早発乳房とは?
他に性早熟傾向と思われる症状がないのに、おっぱいだけが大きくなってくる一時的なホルモン亢進による症状で、ほとんどが2歳以下の女の子に見られます。両方の乳房や乳腺が膨らんできますが、一時的なもので、どんどん大きくなって大人の女性のようになる、ということはありません。はっきりとした原因はわかっていませんが、卵巣から分泌される女性ホルモンが一時的に出過ぎるのが原因だと考えられています。特に治療の必要はなく、ほとんどが数年の間に自然に消滅します。
乳房以外にも、身長が急激に伸びてきたり、陰毛や脇毛が生え始めたり、月経が始まったりといった2次的な症状が見られる場合は、思春期早発症という別の病気が疑われますので、精密な検査が必要になります。思春期早発症の場合は、一般的には6~7歳くらいの時に症状が現れ始めます。脳腫瘍や水頭症、卵巣刺激ホルモンなどの内分泌異常であったりします。あまりにも早期に性刺激ホルモンが分泌されることで、やがて骨の成長が止まり、低身長になる場合があります。このようなご心配がある方はぜひご相談ください。
女性化乳房
男の子なのに胸が膨らんできた!!と大慌てするのですが、思春期の男の子の60%がなると言われている程、比較的一般的なことです。思春期は、ホルモンバランスが崩れやすく、それが原因で一時的に女性のように胸が膨らむことがありますが、そのうちなくなります。しかし、極めて稀にホルモンの病気の事もあるので、心配な時は一度ご来院ください。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。