昼間はオムツがなくても、ちゃんとトイレで出来るのに、夜になると寝ている間におねしょしてしまうお子さんがいます。寝る前にあまり水分を取らせないようにしても、おねしょをしてしまう様なら、夜尿症の可能性があります。
夜尿症は、抗利尿ホルモンと関係しています。このホルモンは、通常なら夜間に分泌されて、夜寝ていている間にトイレに行く必要がないように、尿の量を調節する働きをしています。しかし、小児のうちはこのホルモンがバランス良く分泌されないため、夜間の尿量をうまくコントロールできないので多くなり、おねしょしてしまうのです。また、かなりの個人差はありますが、膀胱容量が小さいことも大きな原因のひとつとして考えられています。
大抵の場合は、4歳くらいになれば、ホルモンバランスが安定してくるのですが、それでもおねしょを繰り返すようなら、尿の比重や浸透圧を調べて抗利尿ホルモンがきちんと分泌されているか、あるいは膀胱の大きさを測る検査をして、一般的なサイズよりも容量が小さくないか、膀胱や腎臓の発達に異常がないか、などを調べます。
夜尿症への対処法
1)生活習慣の改善
夜尿症は、ホルモンの分泌や膀胱、腎臓に問題がある可能性もありますが、精神的なもの(自律神経やストレス)もおおいに影響するといわれています。また、遺伝性があって、両親のどちらかが昔そうだったという話はよく聞きます。従っておねしょをしたからといって、あまり怒りすぎるのも問題です。また体の冷えも原因となりますので、あまり冷たいモノばかり食べたり、寝る前に体を冷やさないようにしましょう。寝る前の水分量を少なめにして、寝る前には必ずトイレに行くという習慣をつけることも大切です。
2)抗利尿ホルモン
経口薬と点鼻薬がありますが、いずれもそのホルモン作用で尿の濃度を濃くして、尿量を抑える働きをします。
3)膀胱機能改善薬
コリン薬を使って、膀胱容量を大きくして膀胱機能を安定させ、なるべく多くの尿をためられるようにします。
4)アラーム療法
夜尿症の子供の中には、眠りが深くて、尿意をもよおしても気がつかない(起きない)ような場合があります。眠りが深いことは異常ではないので心配ないのですが、尿意を感じても、布団の中でおしっこしてしまわないように、いわゆる排尿を抑制する訓練のために、パンツが濡れるとアラームが鳴るようなセンサーをつけるアラーム療法をという方法があります。
いずれの治療法にしても、治療を始めるのは小学校入学前後が最適です。おねしょで心配ならぜひ一度当クリニックに御相談下さい。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。