新米ママや離乳食が始まった頃のお母さんたちからは、よく母乳や卒乳について相談を受けます。
今回は母乳育児についてよくある質問を取り上げたいと思います。
授乳中に食べたほうがいいもの、食べてはいけないものはありますか?
母乳は、お母さんが食べたものが血液になって作られますので、脂っこいものを食べれば脂っこい味になりますし、甘いものを食べればドロッとした甘い味になります。また、アルコールを飲めば、母乳にも微量のアルコールが混じってしまいます。
ですから、授乳中は栄養バランスの取れた食事を取ることが大切です。一般的にはこってりした洋食よりは、薄味のさっぱりした和食、パンやパスタよりもご飯のほうが良いとされています。一度、ご自分の母乳を味見してみてはいかがでしょうか?大人でも「おいしい!」と思える味なら、今の食生活で合格でしょう。
また、授乳で赤ちゃんが飲んだ分だけお母さんの体からは水分がなくなりますので、授乳後は水分補給を忘れずに!
母乳とミルクを混合であげていると、母乳を嫌がるようになってしまいました・・・
もしかしたら、赤ちゃんが哺乳瓶の手軽さに慣れてしまったのかもしれません。哺乳瓶のゴム乳首は、吸い付いただけで簡単に出るようになっているので、赤ちゃんでもゴクゴク飲めますが、お母さんの乳首はしっかり吸い付かないと出ません。
また、母乳は赤ちゃんに吸いつかれた刺激が脳に送られてから作られるので、哺乳瓶みたいに吸えばすぐにどんどん出るわけでもありません。従って、ミルクに慣れてしまうと母乳を嫌がることもあります。
母乳で育てたいのに、母乳が足りていないかもしれないと心配してミルクをあげるくらいなら、何度でも欲しがるだけ母乳をあげてみてはいかがでしょうか?また、体重のチェックや栄養状態のチェックを当クリニックでやってみませんか?
1日に10回以上も母乳を欲しがるのですが、母乳が足りていないのでしょうか?
母乳が足りているかどうかを判断するひとつの指標として、赤ちゃんの体重が順調に増えているかどうかを見ます。順調に増えているようならまず心配ありません。たとえ体重が増えていなくても、赤ちゃんの機嫌が良くて全身状態が良好なら問題ないでしょう。
また、母乳とミルクでは、母乳のほうが消化吸収が早いので、授乳の間隔が短くなります。たくさん飲んでも赤ちゃんに影響することはありませんので、一日何回でも、赤ちゃんが欲しがるだけあげましょう。また、赤ちゃんが吸うことによる刺激で、お母さんの脳から出る母乳を作るホルモンの分泌が盛んになりますので、おっぱいの出もよくなります。
風邪をひいている時は母乳をあげないほうがよいのでしょうか?
母乳から病気が移ることはありませんのでご安心下さい。逆に、母乳からお母さんの持っている免疫を赤ちゃんに与えることで、赤ちゃんが感染するリスクが少なくなります。ただし、お母さんが発熱していたり、咳がひどかったり、調子が悪い時は話は別。できれば直接母乳は避けて、手でしぼり、この時は哺乳瓶で与えましょう。
授乳中は、風邪薬などを飲んではいけないのでしょうか?
授乳中に歯が痛くなったり、熱が出たりして、薬を飲まずに我慢するお母さんがいます。また、薬を飲んでいる間はミルクにする方もいるでしょう。しかし、今まで母乳でしか飲んだことのない赤ちゃんが突然ミルクになるのは、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても大きな負担になりますし、また母乳をやめてしまうと、せっかく出ていたホルモンの分泌が悪くなってしまいます。
母乳に移る量はごくわずか。飲んではいけない薬は特殊な薬、またはお子さんが特殊な病気を持っている場合だけです。母乳に影響の少ない薬を処方することができますので、授乳中でもためらわずにご相談下さい。
注意しなければならないのは、妊娠中です。妊娠3ヶ月までは赤ちゃんの体ができる時なので、できる限り薬は控えましょう。
母乳ばかり欲しがって、離乳食を食べてくれません
母乳の場合、どのくらいの量が出ていて、どの程度栄養があるのかが目に見えないために、不安になるお母さんが多いです。もし赤ちゃんが離乳食よりも母乳を欲しがるようなら、それはそれで良いのです。母乳には、お母さんの体で作られた様々な栄養が含まれていますので、そんなに急いで離乳食を始めなくても大丈夫です。
また、母乳から離乳食へ移行する時は、ペースト状の柔らかいモノから少しずつ始めるようにしましょう。おっばいしか飲んだことのない赤ちゃんは、口に入れてから1~2回モグモグすればトロッと溶けて飲み込めるくらいでないと、喉につっかかる感じが嫌でベーッと出してしまいます。赤ちゃんのペースに合わせて、焦らずに少しずつ離乳食を進めましょう。
いつになったら母乳をやめられますか?
「あんまり長く母乳をあげているとよくないのかしら?」「そろそろ卒乳してもらいたいんだけど・・・」と悩んでいるお母さんがたくさんいらっしゃいます。でも、そんなに急がなくても大丈夫です。離乳食を食べるようになっても、まだ母乳を欲しがるなら、どうぞ与えてあげて下さい。母乳にはたくさんの栄養とお母さんからの免疫があります。
最近の研究では、母乳で育った子は大人になってから生活習慣病になるリスクは少ないとか。考えてみれば、大人になっても母乳を飲んでいる人はいませんよね。つまり、いずれ時期がくれば自然と卒業するものです。いつまでに!と時期を決めて焦ったりしないで、赤ちゃんの成長と生活リズムに合わせて気長に考えましょう。
【この記事を書いた人】医学博士 中野康伸
横浜市生まれ、自治医科大学卒
・日本小児科学会専門医
・日本アレルギー学会専門医
・日本東洋医学会専門医
横浜市港北区で小児科専門医として、地域に根差した診療を行っています。「病気・症状何でもQ&A」のコーナーでは、一般の方にも分かる最新の医学知識や予防接種の情報、育児・発育の心配な事、救急時の対応など、様々なトピックを掲載しています。